中国が動画配信サイトから海外コンテンツを締め出し!? どうなる日本のアニメ
中国のオタクたちが、危機に瀕している。国内のオンライン動画配信サイトで、海外テレビコンテンツの配信に規制が設けられるというのだ。
米ウォール・ストリートジャーナル紙などによると、中国国家新聞出版広播電影電視総局が、国内動画配信サイトのテレビコンテンツに占める輸入品の割合を30%未満に制限することを計画しているという。
海外コンテンツの配信には、作品ごとに審査が義務付けられる可能性もあるとみられ、中国での海外コンテンツのリアルタイムでの視聴が難しくなる恐れも出てくる。
「規制の背景には、国内コンテンツ産業を育成しようという当局の意図がある」そう話すのは、中国在住ジャーナリストの吉井透氏だ。
「中国ではアニメ・マンガ市場は300億円を突破しており、これとは別にキャラクタービジネスの市場規模が500億ともいわれています。しかし、その大半は日本を中心とした海外からの輸入コンテンツによるもの。当局はこれまでも国産コンテンツを奨励してきましたが、輸入モノのシェアを切り崩すにはいたっていません。自動車や家電業界では国内産業育成を目的とした不良品騒動などの外資バッシングが相次いで起こっていますが、アニメやマンガに不良品の濡れ衣を着せるのは難しい。そこで、輸入コンテンツの配信を止めるという行動に出たものだと思われます」
中国版ツイッター『微博』では、こうした規制の動きに対し「海外コンテンツが見れなくなったら、一体何を見ればいいの?」という声もある一方、「結局、海賊版業者を儲けさせるだけ」という指摘もある。
一方で、知財保護を専門とする調査会社、アライジェンスコンサルタンツ代表の太田基寛氏はこう話す。
「数年前まではコピーDVDはネットモールなどで堂々と売られていたが、当局による取り締まりが強化され、いまや限られた実店舗や路上で密かに手売りされているのみ。基本的にはコピーするだけの海賊版ビジネスは、雇用創出効果もあまりないので、当局も遠慮なく潰しにかかっています。オンライン動画配信で規制が強化されても、瀕死状態の海賊版業者が復興することはないでしょう」
オンライン配信と海賊版と両面からの規制により、中国のオタクたちは国産コンテンツを見ざるを得ない状況となりそうだ。
しかし、斬新性や創意に欠如した中国産コンテンツの質が急激に改善されるとも思えない。風俗摘発しかり、人民の娯楽を奪うような政策は、文革にも通じるものがあり、中国のオタクに同情を禁じ得ないが、日本にとっても中国という重要なコンテンツ市場を失いかねないこの規制。
今後の同行が注目される。
<取材・文/奥窪優木>
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