北朝鮮ガールズグループの中国公演ドタキャンで一番泣いたのは誰?

国営の中国中央電視台(CCTV)でもモランボン楽団の北京公演は報じられたが……

 北朝鮮の女性音楽グループである 「モランボン(牡丹峰)楽団」の北京公演のキャンセルは日本でも報じられて話題になった。
 ドタキャンされた北京公演は、12日から3日間行われる予定で11日にリハーサルも行われていたがキャンセル、帰国となった。推測の域を出ないが原因は各メディアで伝えられているので本記事では割愛する。中国メディアが正式に発表したのは、「業務連絡が上手く行かず急遽キャンセルとなった」(筆者訳) だけだった。

 ただ、そもそも公演の発表も、モランボン楽団が中国への入国日だった12月9日と突然だった。その理由はチケットが販売されない非商業公演のため宣伝、告知の必要がなかったからだ。

 会場だった北京国家大劇院は最大2200人ほど収容でき、午後3時半からと午後7時半からの2回公演のすべてを招待客で埋める予定だったようだ。

北朝鮮ではチケットがレディ・ガガのアリーナ席級の価値!

 モランボン楽団は、2012年7月に金正恩第一書記の肝煎りで結成されたとされる楽団だ。これまでは国内向けで外国人にも公開されていなかったが今年10月10日の「朝鮮労働党創設70周年」直後の12日から16日に外国人も観覧可能なイベントとし10日まで1週間切った10月上旬に突如発表。それが外国人へのモランボン初披露となっている。

 10日の朝鮮労働党創設70周年時の訪問許可を厳しくしていたら思った以上に観光客が集まらず焦るように目玉イベントとして急ごしらえで発表したようだが、1週間前では入国手続きが間に合わないため、観覧できた外国人はかなり少なかったようだ。チケット代は、レディ・ガガのライブのアリーナ席並の100ユーロ(約1万3000円)と北朝鮮の物価を考えると超がつく高級公演だが人気は高い。

 中国でも非常に人気があり、動画サイトなどには多数のモランボンの動画がアップされているなどファンも増えている。

 日本語の字幕をつけた動画もYouTubeでは見つけられる。

一般販売されず、関係者配布だけだったプレミアチケット

 今回予定されていた中国公演、チケットは基本的には一般には販売されず、各関係者へ配布されたのみだ。北京から北朝鮮語で国際発信するラジオ局ディレクターの話によると、北京の北朝鮮大使館でも3日間×2回の6回分の公演で50枚分のチケットしか配布されておらず取り合いになっていたそうで、「朝鮮大使館の職員と家族だけで数百人。北京駐在の朝鮮人となると数千人はいるので多くの招待客は中国政府関係者やそれに近い人たちになると思う」と話す。

 非売品なのに、招待客としてチケットを受けた人間が売却したものがブローカーの手に渡ったのだろうか。マーケットにはそうした流出チケットもチラホラ見られたが、どれもプレミアムが付き、北京のエリート会社員の月給くらいで売買されていた。

 公演キャンセルが伝えられる直前の12日昼の時点でチケット価格は1万元(約18万7000円)を超えていたほど。

 ただ、チケットは、座席指定されていたので転売者は容易にバレるはずだ。それに加えて、中国政府高官とブローカーから購入した一般人等が同じ会場に入ることになるなど、セキュリティ上もいかがなものかと思える感じだったのは「らしい」とも言える。

突然のキャンセルで一番割を食ったのは……

この国際列車でモランボン楽団ご一行は丹東から中国入りした

 モランボン楽団が中国の丹東に上陸を果たしたのは、12月9日の午後4時半過ぎ。平壌からの国際列車で総勢100人ほどの大所帯でやってきた。丹東側は、北朝鮮旅行の実績豊富な「中国青年旅行社」が担当した。この総勢100人の一群は丹東市内で1泊し、翌10日に再び鉄道でゆっくり12時間ほどかけて北京へ向かった。丹東から今年9月に開通した高速鉄道を使い瀋陽経由で北京へ向かえば半分以下の時間で行けたし、中国の技術力を見せつけることができたはずなのだが、通常の鉄道で時間をかけて向かったのは、各自の荷物が多かったからなのだろうか。

 偶然、9日に大連から出張で滞在していた朝鮮族の男性は、一団を乗せたバスを見たという。まさしくアイドルグループの移動のような大騒ぎになっていたそうだ。

 北京公演のチケットは、公演直前の開場前で現金交換の手渡しで渡す予定だった業者が多かったようで、今回のモランボン楽団のドタキャンで一番泣いたのは、チケットを高額で買い取ったにもかかわらず紙くずとなってしまったチケットブローカーなのかもしれない。

 ただ、来年は北朝鮮側も、モランボン楽団の公演を外国人集客イベントとして推してくると予想されている。現在25人いると言われる楽団メンバーの熱烈なファンがAKBヲタならぬモランボンヲタとして”聖地”平壌を目指す……なんてことになるのかもしれない。

<取材・文/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma


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