「大量の水を運べる」「靴が磨ける」etc.自由な発想の“働く自転車”
「水道がない途上国や災害地で水を運びたい」「ペダルを踏むとブラシが回って靴を磨けるようにしたい」
そんな自由な発想から生まれたハンドメイドの自転車が、今年11月に千葉市の幕張メッセで開かれたスポーツ自転車のイベント「サイクルモードインターナショナル」で展示された。
自転車を作ったのは「東京サイクルデザイン専門学校」(http://tcds.jp)の学生たち。自転車クリエーションコース所属の3年生が、「働く自転車をテーマに企画・製作・展示までを行う」との学校の課題に挑戦してできたのが今回の自転車だ。
20リットルのポリタンク4個を積んで走れる自転車「FOUNTAIN BIKE」は紺野哲也さんが製作。「いかにより多くの水を運べるか」をコンセプトに、後輪の左右に2個ずつポリタンクが載せられる。積載時に安定して走れるよう重心を下げているのが特徴で、そのため後輪は前輪の26インチよりも大きい29インチを採用した。
また、坂道や荒れた道などといった過酷な使用状況を想定し、頑丈なフレーム、前2段✕後9段の変速ギア、ディスクブレーキ、太めのスポークなどを装備。とは言えやはり「80リットルの水を積んで上り坂を走るのは大変」だそうだが、ともあれ「形にすることができた」と紺野さんは手応えを感じている。
このほか、目を引いたのは靴磨き職人専用自転車の「SHOE SHINE」。インドの靴磨き職人をターゲットに製作され、スタンドを立ててペダルを踏むとブラシが回転して靴が磨ける。また、大きなフロントバッグに道具一式を収納するしくみだ。使用部品も現地で整備することを考慮したという。
展示された作品はいわば「コンセプトモデル」。学校では過去にも同様のカリキュラムを実施しているが、これまでに企業などから実用化にむけた問い合わせはないという。コンセプトモデルと言ってしまえばそれまでだが、例えば水運搬用自転車は、途上国で使うことを考えると仕様がやや高価に思える。
「あくまで学校の課題。サイクルモードでの展示がゴールです」と同校広報担当者も話す。しかしコンセプトモデルの役割が「新しい可能性の具現化」だとすれば、学生が作った自転車は十分にその水準に達しているといえる。
同校担当者は「作品はどれもきちんと乗って使うことができます。もしも作品が実用化につながればうれしいですね」と話している。<取材・文・撮影/斉藤円華>
専門学校生たちが課題に挑戦
ハッシュタグ