深刻な経済危機のベネズエラ。現地のトヨタが取った生き残りの戦略とは?

トヨタ・ベネズエラのWebサイト。ハイラックスはここでも人気車種だ

 ベネズエラの現在の経済事情は最悪だ。1999年にクーデターで政権に就いたチャベス前大統領によって進められたボリバル社会主義革命が導いた結果は、高騰するインフレ、外貨不足、市場に商品が欠乏という現状を生んだ。メディアも新聞にする紙不足のせいで、逆に電子紙が著しく発展したほどだ。  独裁政府を翼賛しないメディアは、インフレは既に200%を越えており、年末までに300%になると報じている。そのひとつがベネズエラの『Runrun.es』電子紙で、7月付で〈インフレ200%〉を伝えている。それをアルゼンチン紙『infobae』が10月付で繰り替えし指摘し、更に〈年末までに300%に達成する〉と報じた。一方のマドゥロ大統領は〈「今年のインフレ85%に収まる」〉と公言していることも同紙は加えた。今年はベネズエラ中央銀行からの公式の経済指標は一切出されていない。経済事情が最悪なので政府が公表させないのだ。  この厳しい事情の中でトヨタ・ベネズエラは生き残りをかけて健闘している。

トヨタ・ベネズエラの取った「生き残りの戦略」

 11月まで部品の輸入が可能ということでフォーチュナーとハイラックスを僅かの台数ではあるが生産していた。しかし、現在その体制維持でさえも困難となり、苦肉の策から生まれたのが部品の生産である。好調のアルゼンチントヨタの工場に部品を輸出することである。〈その第1号トラックが11月27日にアルゼンチンに向けて出発した〉という。そして〈4つの部品を先ず生産し、来年末までに26の部品をラテンアメリカ市場に輸出する計画だ〉と現地の電子紙『Notihoy』が報じた。更に同紙は〈この輸出によって200万ドル(2億4000万円)の入金があり、それで自動車の生産に必要なパーツを購入する〉というプランがあることにも言及した。  ベネズエラの電子紙『Region.com』によると、〈輸出で得る金額の60%が輸出企業の入金となり、残り40%は政府に収める〉ことになっているという。しかし、政府は現在〈輸出企業が80%そして政府が20%を受け取るという形にすることを検討中だ〉という。〈企業の国への投資を促進するためだ〉としている。  輸出の売上の一部を政府に収めねばならないという義務が企業にある背景には政府の厳しい財政事情があるからだ。国の歳入の9割は原油の輸出から得るもので、今年の原油価格の下落で大幅な歳入減となっている。今年2月付の現地経済紙『El Mundo』におけるトヨタに関する記事に目を通すと、3000万ドル(36億円)の投資をしたあと、カローラセダンの生産に意気込んでいた感に見えたが、〈「一日600台の生産可能な工場であるが88台の生産を予定し、部品の入手状況によって25台の生産に限定することになるであろう」〉とトヨタ・ベネズエラ社長のベエレンス氏が述べたことが報じられた。更に同紙は〈「会社を前に進めるべく労働組合が協力してくれており、良い関係にある」と同氏が述べたことにも付記した。  トヨタラテンアメリカ社長のアンジェロ氏は〈「ベネズエラで競争力あるハイラックスを生産してキューバに輸出する最初の企業になることを望んでいる」〉という。更に同氏は〈「従業員の雇用を確保する為に管轄当局と協力し、良い従業員と情熱をもって取り組めば、ベネズエラは世界と競争出来るということを知ら示すべくトヨタのクマナ工場はその良い機会だ」〉とも語っている。(『Region.com』 )。  苦境にあってなんとか奮闘しているベネズエラトヨタ。アンジェロ氏が言うように、クマナ工場はそのポテンシャルを世界に知ら示すことができるだろうか? <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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