軽自動車税増税のカラクリ。国交省の思惑とは

各社が燃費や室内の広さを競った結果、“弱いモノ”と言えなくなってしまった軽自動車は、ハイブリッドカーとともに、わが国の新車販売を支えている。そんな軽自動車の増税に自動車業界は不満タラタラだが、増税のタイミングで一般販売が始まるのがパーソナルモビリティと呼ばれる超小型車だ。自動二輪車と軽自動車の間の新規格の税金はどうなるのか? 西村直人=文 Text by Naoto Nishimura

軽自動車税増税の背景には国交省の超小型車普及の思惑がある!?

軽自動車税増税 ’13年に日本で販売された新車(537万台)のうち約40%(211万台)が軽自動車だった。今年もスズキのハスラーや、ダイハツのムーヴやタントなどをはじめ、昨年の東京モーターショーで話題となった、スポーツモデルの軽自動車ダイハツ新型コペンやホンダS660の発売が現実味を帯びてくるなど、例年以上の躍進が続くことは間違いない。今年も“軽軍団の一人勝ち”が予想される。  そんななか平成26年度の税制改正では、4月1日から自動車取得税が軽減されることが織り込まれたが、軽自動車税は一転して増税に(’15年4月1日以降に新規取得する新車)。税額は、主に軽トラと呼ばれる貨物用自家用では4000円→5000円と25%のアップに留まったものの、軽自動車全体の販売台数のうち、約80%を占める乗用自家用では7200円→1万800円と50%ものアップとなった。  総務省が検討を始めた当初から、「弱い者いじめだ!」と怒りをあらわにし、増税反対を表明していたのがスズキ会長兼社長の鈴木修氏。確かにごもっともで、「売れている(≒税金をとりやすい)から増税する」という理由では反発は大きい。  さらにバイクに至っては、’15年以降、問答無用で全排気量が増税となる。バイク収集家の私にとって財政難は確定的だ。  ただ、この新税制をよく見ると、巧妙なカラクリが見えてくる。  その理由が、パーソナルモビリティと呼ばれる超小型車だ。パーソナルモビリティとは、1~2人乗りの小さな乗り物のこと。ボディが小さいため人一人の移動に必要なエネルギー量が少なく、現在販売されているハイブリッドカーの3分の1程度。市販されているEVと比較しても約半分と非常に効率がいい。国交省も普及に前向きだ。

超小型車図鑑

【TOYOTA】 トヨタは「i-ROAD」を披露。2人乗りのEVで前輪をリーン(傾斜)させて走る「アクティブリーン走行」が特徴。トヨタ車体の「コムス」はミニカー規格の1人乗り。2人乗りプロトタイプも出た 【HONDA】 沖縄県宮古島や熊本県、埼玉県での実証実験がスタートするホンダMCβ。ボディサイズやパワートレーンを「欧州L7カテゴリ」(欧州の二輪カテゴリの一つ)に準拠した立派な世界戦略車だ! “第二のガラ軽”にはならない!? 【NISSAN】 NISSAN New Mobility CONCEPTは、欧州で販売中のRenault Twizyの日産版だ。パーソナルモビリティ最速を誇るだけでなく、日本でナンバープレートを装着して最初に公道を走った、記念すべきパーソナルモビリティでもある 写真/時事通信社
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会