原油販売に身代金、戦闘員には給与も。スペイン語系メディアが報じた「ISの“歳入と支出”」

ISの資金源について報じるアルゼンチン紙『Infobae』

 11月15-16日にトルコで行なわれたG20首脳会議後の記者会見の席でプーチン大統領が過激派組織「イスラム国」(IS)に資金的支援をしている国がG20に参加している一部の国を含めて40か国ある」と示唆したことは日本のメディアでも報道された。

ISに資金提供「G20含め40カ国」 プーチン大統領 11月17日朝日新聞 

 つい最近起きたシナイ半島上空でのロシアの旅客機の爆破事件や今月13日にパリで起きた同時テロ爆破事件は全てISの犯行だと看做されている。彼らの活発なテロ活動の源である資金はどのようにして手に入れるのであろうか。日本ではあまり馴染みのないスペイン語メディアではどう報じられているか、以下に整理してみたい。

 ISの一番の収入源は原油の販売だというのは定説だ。それに加え、遺跡を破壊させてそこから得る美術品を骨董品として販売、誘拐による身の代金、ヨーロッパに向かう難民が利用する交通手段を提供して得る収入、人身売買と身体の内臓の販売、住民や商人から税金の徴収、麻薬の販売、銀行強盗といった手段から資金を得ているという。これらの収入に加えて、米国、サウジアラビア、カタール、トルコなどが武器と資金を提供して来たのは既に良く知られていることだ。

 まず、原油の売買について各紙が伝えている内容はどのようなものか。その一部を以下に紹介しよう。

メイン資金源は原油の販売だが、採油技術は低い

●米国「HispanTV」2014年11月6日9月2日付

 米国IHSコンサルティングの今年10月に発表した調査によると、〈原油の販売価格バレル7-30ドル、年間の販売収入8億ドル(960億円)〉という。〈ISが支配するイラクの原油をEU加盟の数か国が購入した〉ことを在イラクのハイバスコバEU大使が明確にした。アゼルバイジャンの現地紙「azeri」が〈イスラエルのアゼルバイジャンから原油の輸入が激減した〉ことを伝え、「Financial Times」が〈イスラエルが2015年5月から8月の間に1,900万バレルの原油をイラクの紛争地方(クルド自治区)から購入した。それはイスラエルの年間消費の77%に相当する〉と報じたことに言及している。これはISからの輸入ではないが、注目に値する内容だろう。

●メキシコ「CNNMexico」2月19日付 

 ISはシリアで〈日量44,000バレル、イラクで日量4,000バレル産油〉している。

●アルゼンチン「Infobae」5月19日付 

 ISは〈日量35万バレル採油能力があるが、現在日量5-6万バレルを産油し、価格はバレル25-60ドル〉で提供。

●メキシコ「Milenio.com」10月25日付 

 ISは〈日量3万4000から4万バレルの産油。価格はバレル20-45ドル。一日の販売額150万ドル(1,800万円)〉
〈有志連合とロシアの空爆、そして原油価格の下落から採油は長期持続出来るとは思われない〉〈油井も古く、大手石油企業がもっているような採油技術も持ち合わせていない〉

●メキシコ「Desdelaplaza.com」11月2日付

 ISは〈「シリアの9ヶ所の重要な油井とイラクも重要な油井を支配して、年間で20億ドル(2400億円)を稼いでいる」〉とロシアの中東協会のサタノスキー会長が「Rossia」チャンネルで述べた。〈「採油の凡そ50%の原油は、つい最近まで米国の手に渡っていた」〉とロシアの通信戦略センターのアブザロフ会長が述べた。そして〈「米国の有志連合が本当にISを潰したいのであれば、油井を破壊されていたはずだ」〉と同氏は付け加えた。

●スペイン「El Mundo」11月12日付

 ISは〈バレル20-35ドル〉で提供。〈150バレルを積んだトラックで3,000-5,000ドル(36-60万円)を稼ぐ〉「Financial Times」が〈日量34,000-40,000バレルの産油が見込まれ、一日150万ドルの販売金額を手に入れている〉ように思われると伝えた。

 以上がスペイン語メディアが報じたISの原油の販売から得る資金源についての内容であるが、それ以外にISが資金を得る手段として次のような手口を使っているという報道がある。

人身売買から支配地域公務員の給与徴収まで

 誘拐による身の代金と人身売買そして難民に提供する交通手段から得る収入について一部の記事内容を紹介しよう。

●アルゼンチン「Infobae」5月19日付 

〈性的隷属として女性を売って1,000ドル(12万円)の収入を得る〉

●スペイン「El Mundo」11月12日付 

〈1-9才の子どもは164ドル、40-50才の女性は40ドルがそれぞれ売って得る収入〉

●スペイン「El Pais」11月16日付

〈7,000万ドルから1億ドル(84億円-120億円)が誘拐して身の代金として得た収入〉〈ギリシャまでの移動費用は5,000-7,000ユーロ(65万-91万円)が発生し、その交通手段をISに関係した組織が手配する〉移動する難民の数から判断して〈毎月1億ユーロ(130億円)の収入に繋がる〉

 さらに、その他の資金源として上述の「Infobae」では、歴史遺産を破壊してそこから取り出した美術品などを販売して〈3,600万ドル(43億2000万円)を得た。シリアのモスル市のいくつかの銀行を襲って〈5億ドル(600億円)を手に入れた〉。あたかも市の行政上の運営費であるかのように〈営業税や塵の回収に税金を取る〉ことなどを行なっているという。

 また、些さかユニークな収入として、アサド政府がISの支配下にある〈ニニベ市の職員に給与として毎月1,600万ドル(19億2000万円)を支払っているが、ISはその半分を徴収している〉という報道もある(参照『El Mundo』)。

戦闘員には給与が支払われ、コインの発行も……

 一方、ISの歳出としては、〈毎月300-1000万ドル(36,000-120,000円)を給与として支払っている〉と言及。彼らの統治下に〈凡そ600万人の住民がいる〉という。戦闘員には〈350-500ドル(42,000-60000円)が毎月支給され、妻帯者には50ドル、子どもひとりにつき25ドルが支給される〉という。外人のヨーロッパからの戦闘員には〈毎月平均して1,400ドル(168,000円)が支払われ〉例えば、〈スペインからシリアかイラクでISの戦闘員として加わると年間で16,800ドル(202万円)が支給される〉。〈現地人や近隣諸国からの戦闘員の場合はひと月400ドル(48,000円)が支払われる〉という。(参照:前出「Infobae」「El Mundo」)。

 また、スペイン紙「El Periodico」が伝えるように、コインも発行している。ISはアルカエダのテロ組織とは異なり、あたかも一つの国家としての組織機能を備えたような構造になっているのである。

<文/白石和幸 >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。


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