ハイラックスが販売台数ランキング2位! アルゼンチンでトヨタが絶好調な理由
iProfesional』が11月9日付で伝えている。
アルゼンチン・トヨタは1997年に2万台の生産から始めた。現在、生産能力は年間9万台から14万台に増加された。同社の車両は3年保障か10万キロ走行保障をしているのが特徴だ。前出の記事によれば、そうした努力もあって、顧客からの同車種への信頼は厚く、多くの顧客が平均して5年毎に同じくハイラックスに買い変えているという。
そもそも、アルゼンチン・トヨタは南米市場を担うのが目的で設立された。現在生産されているハイラックスはブラジル、ペルー、コロンビア、パラグアイ、ウルグアイなどに輸出されている。11月5日付の現地紙『iProfesional』によれば、〈「2005年から現在までの輸出総額は150億ドル(1兆9500億円にもなる」〉とダニエル・エレロ社長が述べたという。更にエレロ社長は「(パーツや他車種の輸入の為の)ドルの入手には、我が社は影響を受けない。何故なら、我々は輸出入バランスで輸出超過を達成しているからだ」と答えたそうだ。
このエレロ社長のコメントを補足しておこう。アルゼンチンでは景気の低迷と高いインフレが影響して、ここ数年輸出が不振で、その影響で外貨が不足しているという事情がある。そこで、輸出で健闘している企業には「外貨を稼いでくれている」という褒美として輸入が容易に出来るように政府が輸入に必要なドルの取得を容易にしているのだ。トヨタはこの政府からの支援を受けている企業のひとつなのだ。そして、これが、10%の販売シェアを超えることの原動力にもなったわけだ。
トヨタはアルゼンチン以外にはブラジルとベネズエラに工場をもっているが、ラテンアメリカ市場に欠けていたのがメキシコに生産拠点を築くことであった。そのメキシコへの進出を今年発表した。生産は2019年からだという。メキシコでNo.1の生産台数を保有しているのはニッサンだ。各社のメキシコでの生産は北米市場を狙っての戦略であるが、アルゼンチン・トヨタにもハイラックスの北米市場への輸出プランがあるという。エレロ社長は〈「米国への輸出は我々全員の夢だ」〉と述べ、〈「全く問題ない」〉と答えたことがアルゼンチンの代表紙『Clarin』の11月5日付に掲載されている。同記事の中でエレロ社長は〈「我々はペルーという競争の厳しい市場で問題なく戦っている。ペルーにはタイ国で生産されたハイラックスが無関税で輸入されているのだ。それでも我々のハイラックスは全く問題なく競争している。メキシコまで輸送するのに余計にかかる運賃についても、補助する用意はある。米国市場にもそれが必要だというのであれば、それに応えることも可能だ。しかし、その場合に、14万-20万台の生産キャパの追加が必要となる。その体制は出来ている」〉と述べている。
アルゼンチンでは、ピックアップ型の車で10台に1つがハイラックスだという。また、今年10月の自動車販売台数では同車は2位にランクキングされたほど人気が上昇している。
そんな中、アルゼンチンの「変化」によって、いまのトヨタを取り巻く状況がまた変わる可能性もある。
というのも、11月22日には次期大統領の決戦投票が予定されているのだ。そして、その選挙では、これまで12年間続いた中国・ロシア寄りの外交政治から、欧米に方向転換を計ろうとするマクリ候補が有利になっているのである。これまでの経済政策の踏襲を考えているシオリ候補の前に、必要とあらば景気の回復に通貨の切下げも辞さないというマクリ候補に多くの企業が支持を表明しているという。アルゼンチン・トヨタの経営陣の考えは分からない。しかし、経済に変化をもたらすことを期待しているのは確かだ。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
アルゼンチン・トヨタが相変わらず好調だ。
現在の中南米の経済は中国の景気後退が影響して低迷している。その中にあってアルゼンチン・トヨタはサラテ市にある工場を9億ドル(約1080億円)を投資して生産能力を拡張し、新たに1000人の従業員を雇用する計画だという。高いインフレ、しかも景気後退が続くアルゼンチンで、同国内での販売シェアーも10%を越えたことなどを現地紙『
北米への輸出も「まったく問題ない」
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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