フィギュアの季節到来。スケートリンクに投げ込まれる花が、街角の小さな花屋・宮田花店限定なワケとは?

宮田花店 浅田真央選手の現役続行も決まり、これからの季節、ますますの盛り上がりを見せるであろうフィギュアスケート。演技終了後には、その華麗な舞に、花が投げ入れられるのは誰もが知るところだが、この花が、街角の小さな花屋のものに限定されていることを、皆さんはご存知だろうか?

 どうして会場で販売される花が宮田花店限定になったのか? また、コンサートなどイベント興行では、物販が何よりも“美味しい商売”だと聞く。フィギュアスケートブーム真っ只中の今、この花屋、相当儲かっているのではないか? そんな疑問を解決すべく、東京・本郷にある宮田花店に直撃取材してみた。

独占販売になったのは21年前のことだった

宮田花店

小さなお店だが、宮田花店は1930年から続く老舗の花屋

 演技終了後、スケートリンクにプレゼントを投げ入れる風習は、全世界共通のことらしいが、花を投げ入れるのは、日本以外ではあまりないことらしい。

 しかし、花は軽いため、スケートリンクに上手に投げ入れるのは、そう簡単なことではなく、客席に落ちれば、当然、観客から苦情が来る。また、花びらがスケートリンクに散らかれば、氷でできたリンクで固まってしまい、次の選手の演技に影響が出ることもある。

 そこで日本スケート連盟は21年前、これらの問題を解決すべく、着手に乗り出す。

「当時からリンクに投げるための花は作っていましたが、友人のお母さんが、たまたま連盟の役員だったんです。その方からお話をいただき、ウチでお引き受けすることになったんです」

 そう語るのは、宮田花店の代表・宮田三雄氏。1994年3月に幕張で行われた世界選手権から、花の会場販売は、すべて宮田花店限定になっているという。

華やかな氷上を飾るために欠かせない努力

 しかし、いざ引き受けてはみたものの、安価に大量な花を納品しつつ、華やかな舞台を演出するには、連盟からの要求にひと手間加える必要があったという。

「連盟からは『リンクにちゃんと飛ぶこと』『花びらが散らからないこと』を注文として受けていましたが、そのままでは芸がないですよね。そこでウチは、少し工夫をさせていただきました。まず、重りとなる水を含んだスポンジ。適切な大きさにして、リンクまでまっすぐ飛びようにする以外に、このスポンジ部分に可愛らしい小さなビニール袋で巻いています。通常は、銀紙などを巻きますが、それだと無骨ですからね。次に、花びらが散らからないように、花の部分までビニールで覆っていますが、そのままでは飛んだ時の姿があまり綺麗ではないので、リボンを巻いて飛んだ時にヒラヒラと美しく舞うようにしています」

 加工の工夫もひと苦労だが、花の種類にもこだわっているという。

「選手ごとにイメージカラーがあるので、色の種類にも気を使っています。たとえば、羽生結弦選手のイメージカラーは青。なので、羽生選手が出場する大会では、青い花を用意します。また、先日の大会で復帰した浅田真央選手の場合は、SPとフリーで衣装が違うので、その日の衣装に合わせた色の花を用意するようにしています」

 会場では、バラのほか、ガーベラやカーネーションを用意する時もあるという。また、販売する花は、スケートリンクに投げ入れるものだけではないようだ。

「会場に卸している花は、全部で4種類あります。リンクに投げ込む花も2種類あり、普通のものは500円。金メダルを意識したゴールドのものは、ちょっとサイズも大きく1000円。これは、飛ぶ距離もやや短いので、アリーナ席のお客様用ですね。あと、リングサイドの人が買う手渡し用の花束を3000円くらいで販売しています。最後に、一般販売ではありませんが、メダリストブーケも連盟から受注を受け、納品しています」

 なんとも忙しい仕事だが、その甲斐もあり、連盟からは絶大な信頼を得ているようだ。フィギュアブーム以後、大手花屋からのオファーが続々と連盟にあるようだが、継続して取引が続いていることが、それを証明している。

会場での花の販売は、実はそれほど儲からない

 ここまで話を聞くと、苦労が多いとはいえ、この商売、相当儲かっているように感じる。しかし、実入りはそれほどでもないという。

「安藤美姫選手、高橋大輔選手、浅田真央選手、羽生結弦選手が出る大会は、よく売れました。それでも、一番売れた大会でも500円のものが2000〜3000本くらいです」

 代々木体育館など、大きな会場での開催があるにもかかわらず、これは意外な数字だ。

「会場が広いからといって、花が売れるわけではないんです。代々木体育館は大きいですが、どの客席からもリンクに花が投げれる構造ではないので、実はそれほど売ることができません。なので、平均すると1大会で500円のものが1200〜1300本くらい、ゴールドのもので200本ぐらい、リングサイド用のブーケで60束程度売れるといった感じです。連盟に納めるマージン、材料費、出張費などを考えると、実はあまり儲かってません。それと、国内大会での販売をウチで独占させていただいているとはいえ、大会は基本的にはNHK杯と全日本選手権の2回。この間に大会があったとしても、年に3回ぐらいなんです。実際、ウチの年間収入の内訳でみると、法人との取引き(お祝いなど)が4割、葬儀や結婚式などが3割、店頭販売が2割となり、フィギュアスケートでの収入は、1割に満たないんです」

 以前メディアで「1日で1200〜1300本売れる」と報道されたことがあり“フィギュアブームで儲かっている花屋”と羨ましがられたこともあるそうだが、実態はそうでもないようだ。

「それでも続けているのは、店の宣伝になるという点。それと、長年取引をさせていただいて、私たちもすっかりフィギュアスケートの虜になっているからでしょうね(笑)」

「花を投げ入れる」ことが「花を添える」ことになるように作られた宮田花店の花は、これからもフィギュアの氷上を彩ることになりそうだ。<文・写真/HBO編集部>


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