稲田朋美と「軍歌を歌う幼稚園」を結ぶ、「生長の家原理主義」ネットワーク ――シリーズ【草の根保守の蠢動 第22回】
2015.11.10

出典/YouTube「ダイジェスト 第6回東京靖国一日見真会」より(http://youtu.be/LAY2jsefbZA)
生長の家原理主義の機関誌創刊号にあった「接点」
残念なことに創刊号そのものではない。合本第一集とある。創刊号から第十二号まで、1年分をまとめたものだ。しかし12号分を単純に重ねわせて製本し直し一冊の書籍にしたものでしかないため、各号の奥付まで全てきっちり残っている。資料としての利用価値は充分あるだろう。
創刊号の内容については次回以降詳しく解説するとして、奥付に本連載読者にはお馴染みの名前が登場する。
発行人は前出の「谷口雅春先生を学ぶ誌こそが、生長の家の伝統を引き継ぐものだ」と力説していたの中島省治。そしてその横にあったのがーー
編集人 百地章
百地章だ! あの、「集団的自衛権を合憲とする憲法学者」として、菅官房長官が名前を挙げた百地章が、「谷口雅春先生を学ぶ」創刊号の編集人だったのだ!
政府が「集団的自衛権は合憲である」と主張する際には、百地章のコメントが必ず引用されていた。つまり、この夏、百地章は官邸側のイデオローグのような立場にいた百地章が、「谷口雅春先生を学ぶ」創刊号の編集人だったのだ。そして、冒頭で見たように、「谷口雅春先生を学ぶ会」の会合で、稲田朋美は「祖母から受け継いだ」という「生長の家」の根本教典である「生命の実相」を振りかざしながら講演している。
「官邸側のイデオローグ」百地章と「安倍後継の最有力候補」稲田朋美は、「生長の家原理主義運動」という同じ志を持つインナーサークルに属するわけだ。残るは、「愛国幼稚園」・塚本幼稚園と「生長の家原理主義運動」のつながりだ。
そしてその鍵も「谷口雅春先生を学ぶ」の合本第1集にあった。それは第五号の告知コーナーだった。
「第一回『我が師谷口雅春を語る』」というイベントの告知だ。
講師は仙頭泰。創刊号に収録されたたった2つの論説のうち一つを書いた人物で元生長の家ハワイ教化部長だった人物だ。この人物の講話を聞くのがこのイベントの要旨。注目すべきはイベントの場所だ。「塚本幼稚園」とある。そう、まさに、あの、「愛国幼稚園」が会場なのだ。いかに私立幼稚園とはいえ、幼稚園が外部団体に場所を貸し出すとはなかなか考えにくい。
さらに連絡先に「籠池」という名前が見える。籠池という苗字はそうある苗字ではない。イベントの主催者なのだろう、連絡先の電話番号を掲載している。この籠池なる人物、塚本幼稚園のwebサイト内の「園長の部屋」というコーナーで執筆をしている人物と同姓なのである。
園児に戦時歌謡を歌わせる塚本幼稚園、そして籠池姓の人物が「生長の家原理主義運動」と強く関わりがあると言っても過言ではなかろう。
「安倍後継の最有力候補」稲田朋美や「官邸側のイデオローグ」百地章、そして園児に戦時歌謡を歌わせる「塚本幼稚園」を繋ぐ「生長の家原理主義」運動という一本の線が浮かび上がってきたわけだ。
この連載でこれまで振り返ってきたように、安倍政権を支える「日本会議」の事務総長・椛島有三も、安倍晋三の筆頭ブレーンと目される伊藤哲夫も、「生長の家」から出た人々だ。椛島有三や伊藤哲夫を排出した、宗教法人「生長の家」は、1983年に政治運動から撤退した。しかし、その路線変更を良しとしない古参信徒たちが今、教団に反旗を翻し「生長の家原理主義」運動を展開中であり、その運動に、稲田朋美や百地章など、安倍政権と深いつながりを持つ政治家・学者が参画している。さらにこの「生長の家原理主義」運動は、塚本幼稚園の事例のように、政治の世界だけでなく、市民社会の中にあって、ファナテイックな右傾化風潮を醸し出す要素の一つとなっているように思えてならないのだ。
※1「生長の家」の教義における重要概念の一つ。「生長の家」では「実相界にいたれば、病なし」などと説く。本稿ではこの言葉を「全ての迷いが払われた究極の境地」の意だとだけ解説しておく。この言葉を含め、その他の「生長の家」の教義用語については、本連載の書籍版にて詳しく解説する予定だ。
※2このイベントの参加者たちは、自分たちの活動や運動を「本流運動」と呼んでいる。しかし「生長の家」の分派活動は、この他にも数グループ存在しており、みな「本流運動」を自称している。本連載では混乱を避けるため、かつまた、このイベントの参加者たちが「谷口雅春先生を学ぶ」誌を中心にしていることから、このイベントの参加者たちの集団を「生長の家原理主義者団体」、その主張内容を「生長の家原理主義」と呼称することとする。
<取材・文/菅野完Twitter ID:@noiehoie) |
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『日本会議の研究』 「右傾化」の淵源はどこなのか?「日本会議」とは何なのか?
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