米株下落が始まった「知られざる理由」とは?
2014年6月11、12日と2営業日連続で、NYダウは100ドル超の比較的大幅な下落となった。これは「世界銀行が世界経済見通しを下方修正したことが響いた」(ブルームバーグ)との解説が一般的だった。ただ、それ以上に、共和党下院ナンバー2、カンター議員の予想外の予備選敗北、いわゆる「カンター・ショック」の影響も大きかった可能性がある。
このカンター敗北について、ブルームバーグは以下のように報道していた。
キャンター(カンター)院内総務は10日のバージニア州予備選で、草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」系候補に敗れ、議会での対立が深刻化するとの懸念が強まった。当選7回のベテラン議員の敗北は広範囲にわたり市場に影響する可能性がある。
そのうえで、いくつか市場関係者のコメントを紹介していた。「予想していた人は本当に少なかった」、「私は債務上限問題を懸念していないが、心配している人もいる」。「この先、予算や移民政策などの問題で妥協不能な事態にならないよう願う」、「良い兆候ではないが、展開を見守らなくてはならない」。
ここで注目されるのは、この「カンター敗北」について、「予想していた人は本当に少なかった」というコメント。要するに、マーケットにとってそれは、「全くのサプライズ」だった可能性があったわけだ。
情報氾濫時代の現代、金融マーケットは多くの材料もあっという間に織り込む。その結果、「バイ・ザ・ルーマー、セル・ザ・ファクト(噂で買って、事実で売る)」という反応も少なくない。一方で、そんなマーケットが大きく動くのは、ノーマークの事態に遭遇する「サプライズ」の局面だ。リスクを織り込みに向かう動きが大相場をもたらす。
「カンター敗北」は、上述のように「全くのサプライズ」だったようだ。このため、それに伴う、中間選挙に向けて政治要因が株安をもたらすリスクは、最高値圏で推移する米株のマーケットがこれから織り込みを始めることになりそうだ。
以上のように考えると、11日の米株下落は、後から振り返ったら単なる始まりに過ぎなかったということになる可能性があるのではないか。(了)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など
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「カンター・ショック」という市場のノーマーク
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