あの超有名通販会社社長がリングに!「社長」がリングで戦った理由

企業経営と格闘技に共通点はあるのか?(撮影/山川修一)

 タキシードやパーティドレスに身を包み、ディナーを楽しむ観衆が見守る中、リングに立った男たちが殴り合う。  映画やドラマなら、リングに立つファイターはハングリー精神旺盛で成り上がりを夢見る若者かもしれない。しかし、その日のリングは違った。  その日のリングは後楽園ホールでもマジソン・スクエア・ガーデンでもない、港区白金にある結婚式場「八芳園」のワンフロアに設置され、しかも戦っているファイターは年商600億円超ともされる企業の社長を筆頭に、不動産会社社長や米系超メジャー証券会社のストラテジストだったのだ。

会場となったのは東京・白金台の八芳園。会場には道端アンジェリカさんや高橋克典さんら芸能人の姿も

 このイベントは、K1にも出場していたキックボクサー、新田明臣氏の経営するジム「バンゲリングベイ・スピリット」がチャリティイベントとして開催した「縁 ~enishi~」というイベント。寒川直喜選手を相手にした阿佐美ザウルス選手のラストマッチや、K1で逆輸入ファイターとして名を馳せ、その後白血病にかかるも見事に復帰したノブ・ハヤシ選手と日本人ヘビー級ファイターとして期待されているKOICHI選手という玄人受けするプロの試合とともに、キックボクシングを練習する会社経営者たちがリングに立った。

社員の応援を受けリングに立つ不動産会社社長

 出場する社長の一人、「スマサガ不動産」社長の城戸輝哉氏(45歳)は前日計量時に緊張した面持ちでこう語った。

キックボクシングを始めて20kg体重を落とした「スマサガ不動産」社長の城戸輝哉氏

「試合が近づくにつれ、仕事に集中できなくなっていますね(笑)。でも事業を立ち上げて以来、仕事に打ち込んできたうちに身体も太っちゃって。どうにかしないとなと思って、数年前からキックボクシングを始めたんです。キックボクシングを始めて10kg落ち、この試合でさらに10kg絞りました。勝ち負けも重要だけど、自分の生き方を見つめ直す機会だと思って、試合の話を頂いたときに出ることを決めました」  社長業の傍ら、仕事の合間を縫って練習に汗を流し、付き合いの酒などは控えて減量に勤しんだ。当日、20歳以上若い小林旭さん(保育士)を相手に、最後まで戦い抜いた。判定で負けはしたものの、社長の応援に訪れた「スマサガ不動産」のスタッフは一様に盛り上がっていた。

「非常識であることは成功の秘訣」

「ショップジャパン」のオークローンマーケティング社長、ハリー・A・ヒル氏

 そして、会場を大きく盛り上げたのは当日のファイナルとして登場したあの超有名通販会社「ショップジャパン」=オークローンマーケティング社長のハリー・A・ヒル氏の試合だった。  今年52歳となるヒル社長は前日計量時にこう語った。 「練習しているジム(バンゲリングベイ)朝6時半から開くので、仕事前のその時間だけしか練習できないので朝練習していました。試合に出るといったら、周りからはクレイジーだと言われました(笑)。でも、ビジネスは普通にやっていても普通にしかならない。非常識なことをやることが成功の秘訣でしょう。私は少林寺拳法は昔から練習していましたし、キックボクシングも一生懸命練習してレベルが上がってきている。ビジネスでも準備せずにリスクを取るようなことをしてはいけませんが、私は仕事で忙しい中でも時間を1時間でも時間を捻出して、集中して練習してきた。準備をした上でならばリスクを取ることもできる。そしてそれこそが常識を超えるために必要なことだと思う。だから試合の話が来た時に、ぜひ出たいと思いました。

1R目は押されたが、2R目にパンチを当てて挽回したヒル氏

 ビジネスと格闘技は『平常心』を保つことに役立ちます。格闘技はいろいろな局面で考えて冷静に対処することを要求されます。ビジネスでも同じです。私は社長だから、うまくいかないときがあるのは本当は困るんですが(笑)、それでもうまくいかないときもあります。ただ、そんな時でもいかにパニックにならないで対応するか、リーダーシップを取れるかが大切。そういうことが養われると思います」  当日、ヒル氏の対戦相手は、石川県で息子とともに空手道場で汗を流している設備会社勤務の喜多信行さん(43歳)。空手のベースがしっかりしており、息子の声援を受けて頑張る喜多選手はかなりの強敵でヒル氏もかなり殴られてしまったものの、判定で見事勝利を収めた。  試合後のヒル氏はリングの上でこう語った。

2-0の判定勝利を収めたヒル氏

「僕が殴られるたびに、うちの社員がイエーイイエーイと叫んでいるのが聞こえたよ(笑)。でも、頑張って勝てた。時間を作りたいと思えば誰でも作れるし、体重だって80kgまで落ちました。チャレンジに歳は関係ないと思います」  ビジネスの世界では勝者だとしても、リングの上では無様に負けるかもしれない、社員の前で殴られて鼻血を出すかもしれない。大怪我をすることもあるかもしれない。そんなリスクを負っても、未知の分野で自分を試すことを求めるスピリッツ。  成功への道はこうしたスピリッツがあって始めて開かれるのかもしれない。 <取材・文・撮影/HBO取材班 撮影/山川修一>
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