ITで金融と投資が変わる。フィンテック企業で注目を集める「ソーシャルレンディング」

image by geralt (CC0 PublicDomain)

 ここ最近盛り上がりを見せているスタートアップがある。それは、「フィンテック」と呼ばれるものだ。  フィンテックとは「Finance」と「Technology」を掛けあわせた造語で、要するに金融系のITサービスである。  代表的なものとして、ビットコインなどのような仮想通貨やPayPalなどのようなオンラインペイメント、さらには「ロボアドバイザー」と呼ばれるコンピューターを使った投資助言、そして銀行を介さずP2Pで融資を行うソーシャルレンディングなどが最近多くの出資を集めるトップ3とも言えるフィンテック系企業となっている。  中でも、ソーシャルレンディングは、10月1日にカリフォルニアのソーシャルレンディングサービスである「Social Finance(SoFi)」がソフトバンクをリードとなって10億ドルの資金調達をしたことは記憶に新しい。  そして、このソーシャルレンディング、スタートアップとしてだけでなく、新たに資産の運用先を探している一般の投資家にとっても注目すべき存在なのだ。

ソーシャルレンディングとは何か?

海外に強いソーシャルレンディング、クラウドクレジット社の社長・杉山智行氏

 この急成長しているソーシャルレンディングとは一体どのようなものか。2013年に設立され、昨年6月からソーシャルレンディング事業を始め、他に例を見ない海外展開を行っているクラウドクレジット社の杉山智行氏に聞いてみた。 「簡単にいえば、銀行を介さずに、オンラインで個人投資家が直接個人や中小企業に貸付することができるプラットフォームを提供するサービスのことです。日本には現在9くらいのプラットフォームが存在しています」  日本では、ソーシャルレンディングより前に、あるプロジェクトに対してそのサポートを支持する人が資金を提供する「クラウドファンディング」のほうが言葉としてポピュラーになったことから、「投資型クラウドファンディング」などとも呼ばれている。 「ソーシャルレンディングが急成長してきた契機としては、サブプライム危機が挙げられます。銀行はもともと預金を集めて資金調達し、それを貸し付けているわけですが、預金は元本保証なのでリスクの高い貸付をすることには限界があります。当たり前のことですが、サブプライム危機まではそれすら忘れ去られてハイリスクな投資に狂奔していたんです。それがサブプライム危機で明らかになり、バーゼルⅢなどが決まったために銀行は自己資本比率を引き上げるためにお金を貸さなくなり、貸したとしてもリスクが低い富裕層や大企業だけを対象に貸付を行うようになってしまった。  一方で、貧困国などにはムハンマド・ユヌス氏のグラミン銀行によるマイクロファイナンスなどが貸し付けていて、そこも飽和状態になっている。  そんな中、銀行が貸し付ける層とマイクロファイナンスが貸し付ける層の中間、“ミッシング・ミドル”が手薄になっている。そこにソーシャルレンディングのニーズが出てくるわけです」

運用先としてのソーシャルレンディングにおける期待リターンは?

 日本のソーシャルレンディングサービスである「maneo」は年5~8.0%、「SBIソーシャルレンディング」も年2~6%前後の期待利回りを掲げるローンファンドをサイトに掲載している。また、杉山氏のクラウドクレジット社は、新興国や途上国の消費者ローンや事業者ローンに投資可能になっており、例えばスペイン・フィンランド・エストニアの三国に分散して投資するローンファンドではリターン追求型で期待利回り14%、リスク低減型で8.5%とこれもかなりのリターンが見込まれる。  もちろん、新興国ゆえにさまざまなリスクはあるが、情報収集がしっかりとできる投資家にとっては新たな運用先としてポートフォリオに加えることを検討する余地は十分にあるだろう。  世界のソーシャルレンディング市場は2014年時で約1兆円とされている(Liberum調べ)。2009年からは年平均成長率136%という驚異的な成長を見せている市場だ。今後10年で100兆円~300兆円規模になると予想されており、市場としても運用先としても今後、注視して置く必要があるだろう。<取材・文/HBO取材班>
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