ライバル店の入居先をビルごと買収。不動産王になりつつあるZARA創業者アマンシオ・オルテガ
Publico」によると、「Forbes」のデータではその日のオルテガが富豪No.1となった時の〈資産総額は798億ドル(9兆6,558億円)と評価され、ビル・ゲイツの781億ドル(9兆4,500億円)を追い越した〉のだという。
オルテガは、御存知の通りZARAを含めたアパレルとホームファーニシングのブランド企業を8つもち、それをひとつのホールティングとしている。それがインディテックス(INDITEX)である。オルテガはインディテックスの59.3%の株主なのだ。この8社の株価に加えて、最近オルテガの資産が増えたのにはもう一つの理由がある。
それは、最近オルテガが始めた不動産事業である。スペインはもちろんのこと、英国や米国で建物を買収して、その資産が彼の資産評価に加えられているのだ。
彼は不動産事業の展開のために「ポンテガデア(Pontegadea)」社を2002年に設立した。そして、ポンテガデア社はインディテックスが構えている一部店舗のオーナーでもあるのだ。インディテックスは〈2014-2015年(2014年2月1日-2015年1月31日)の会計年度の店舗の借家料として3,371万ユーロ(44億8,300万円)をオルテガ=ポンテガデアに支払った〉という。(参照:「Publico」紙 )
他にも、マドリードの高層ビル「トッレ・ピカソ」を2011年に4億ユーロ(532億円)〉で購入し、バルセロナでも旧バネスト銀行の本社があった建物を8000万ユーロ(106億円)で手に入れている。また、イギリスでは、ロンドンの資源メジャー、リオ・ティント社の本社屋を3億3500万ユーロ(445億円)で買収したほか(参照:「Economia」紙)、ニューヨークでも一等地にある複数の商業ビルを手に入れている。
そして、このオルテガ=ポンテガデア社の不動産買収戦略で面白いエピソードがある。
同社は特に英国に力を入れているようだが、その中でも注目すべきは、今年4月に〈ロンドンのオックスフォード通りにある1920年に建てられたデボンシャー公爵邸だった建物を現在の所有者ランド・セキュリティー&フログモアー社から4億ポンド(740億円)で購入した〉ことだ。
実は、その建物の中に2万平方メートルの店を構えているのが、スペインで現在ZARAの牙城を脅かしているアイルランドのファスト・ファッション「PRIMARK」なのだ。
同じことはスペインでも起きている。10月にスペインのマドリードで、「PRIMARK」が1万2400平方メートルの店舗をオープンした1924年建立の由緒ある建物も今年4月にオルテガは買収しているのである。すなわち、「PRIMARK」がこの店舗の開設を決めて内装などをしていた時期にオルテガはこの建物を購入したことになる。オルテガがPRIMARKを意識しての戦略なのかは定かではないが、「PRIMARK」はまるでオルテガの手のひらの上で踊らされているかのようなことになってしまったようにも見える。(参照:「Economia」、「El Confidencial」)
今年のオルテガの所得はインディテックスの株主配当金などで9億6,100万ユーロ(1278億円)だという。
今、アマンシオ・オルテガは世界の不動産王としても飛躍しているのだ。
<文/白石和幸 photo by cabezadeturco on flickr(CC BY-SA 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
本サイトでもたびたび取り上げているZARAの創業者アマンシオ・オルテガが、10月23日の数時間あまり世界一の富豪となった。
ヨーロッパとアメリカの時差が埋まりニューヨークの株式市場が開くと、再びビル・ゲイツが富豪No.1のポジションを取り戻したものの、スペインでは経済産業部門で世界に誇れるものは唯一ZARAだけであるが故に、その日のスペインの大半のメディアは「アマンシオ・オルテガが世界富豪No.1になった」というニュースが大きく取り上げられた。
スペイン紙「
不動産事業を急速に拡大させるアマンシオ・オルテガ
ライバル店の入居するビルを、ビルごと買収
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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