「神道政治連盟本丸論」が妄言である理由――シリーズ【草の根保守の蠢動 第20回・後編】

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「神道政治連盟本丸論」はナンセンス

神社本庁のサイト

 さらに、違和感を覚えるのは、神道政治連盟の影響力を必要以上に指摘する論調だ。

 確かに、神道政治連盟は活発な活動を行っている。はるか昔の話にはなるものの、森喜朗が総理であった時、「日本は神の国」と発言し物議を醸したことがある。あの発言が飛び出したのも、神道政治連盟の集会であった。この話以外にも、神道政治連盟と自民党を始めとする保守系政治家に関するエピソードは事欠かない。また、報道する側としても、「神道政治連盟」という名前を用いれば、「戦前の国家神道体制の復活」という分かりやすい図式を読者に抱かせることができ、極めて便利だ。

 しかし、しかしである。

 ぜひご自分の周囲を冷静に見回していただきたい。読者各位の周りに、「神道の信者」を名乗る人がおられるだろうか?「創価学会の信徒」「立正佼成会の信徒」「エホバの証人の信者」「幸福の科学の信者」はいるかもしれない。しかし「神道の信者」と名乗る人が果たして存在するのか?確かに、地元の神社の氏子として熱心に活動しておられる方もいるだろう。だがしかしそれらの人々から、先に列挙した各種宗教団体の「信者」から受けるような印象を受けるだろうか?あるいは、それらの人々が、「教団の号令一下、一糸乱れず社会運動に邁進する」あるいは「神主が『この候補に投票するように』と呼びかけたら皆が応じる」ような姿が想像できるだろうか?おそらく難しいはずだ。

 事実、これまで取材した範囲でも、「神道政治連盟」からは「カネはあっても人は居ない」という印象を受ける。その政治力の源泉であろう「カネ」とて、明治神宮など、ごく一握りの有名神社(※) からあがるカネが根拠であり、「神道政治連盟」の母体である神社本庁全体として資金力を有するわけでもない。また、イベントの開催等においても、神社本庁の職員や神道政治連盟の専従職員が運営にあたっているわけではない。これまで取材した神道政治連盟主催のイベントで、設営や会場整理などに当たっていた人々は、皆「日本会議」の人々であったし、とりわけ目につくのは日本青年協議会のメンバーであった。また、神道政治連盟のイベントの会場付近では、必ずと言っていいほどの頻度で「日本会議」の書籍販売コーナーが設置されている。

 つまり、「カネはあっても人は居ない」団体である神道政治連盟は、「運動体」としてそれほど強力でないのだ。

 こうした「神道政治連盟にはカネがあっても人は居ない。運動の実質部分は日本会議や日本青年協議会のメンバーにおんぶに抱っこの状態である」という実態を無視している報道は、よほど最近の現場を歩かず「神道」という名前だけで扇情しようとする極めて怠惰な報道であるか、もしくは、「靖国神社国家護持法案制定運動」華やかりし頃の政治記者の伝統を引きずる古色蒼然たる現実を無視した報道であると言わざるをえない。

 このような怠惰で古色蒼然たる報道姿勢や論調とも、吾人ははっきりと距離を置きたい。

本連載の問題意識

「宗教の政治進出」を扇情的に報道する姿勢と距離を置き、「神道政治連盟本丸論」と距離を置いた上で、改めて本連載の問題意識を説明しておこう。

 本稿冒頭で述べた、「日本会議も日本政策研究センターも元々は30年以上前に滅んだはずの『生長の家政治運動』が淵源である」という図式だけを読者に提示するのが本稿の目的ではない。

 今後連載が進むにつれ、日本会議や日本政策研究センターを生み出した、「生長の家政治運動」の歴史や、それを支えたかつての「生長の家」の教義もしくは谷口雅春の思想を解説することもあろう。しかしそれも主目的ではない。

 本連載の問題意識は、連載開始の2月から変わっていない。

 ぜひ、本連載の冒頭が、「美しい日本の憲法を作る国民の会」設立総会における、衛藤晟一参議院議員の「安倍内閣は憲法改正の最終目標のために、みんなの力を得て成立させた」という発言を引用するところか始まったことを思い出していただきたい。

 この「みんな」とは誰なのか?という問いこそ本連載が明かそうとしているものなのだ。そしてこの「みんな」がこれまで何を行ってきたのか?「みんな」はどこへ向かおうとしているのかを、一つずつ具体的な根拠を抑えて解明していきたいのだ。

 そしてその問いを出発点とし、

安倍政権の反動ぶりも、路上で巻き起こるヘイトの嵐も、『社会全体の右傾化』によってもたらされたものではなく、実は、ごくごく一握りの一部の人々が長年にわたって続けてきた『市民運動』の結実なのではないか?

反動の色をますます強める安倍政権を支えるものも、路上で巻き起こるヘイトの嵐を支えるものも、実は、同じ人々がオーガナイズしているのではないか?

という仮説について、立証せんとするのが、この連載の目的だ。

 旅はもう少し続く。今しばらくお付き合い願いたい。

※有名神社と「一群の人々」のつながりについては、本連載においても頁を改めて論じるであろう。しかし今は、「神道政治連盟」そのものの「意外な弱さ」に注目していただきたい。

<取材・文/菅野完(TwitterID:@noiehoie)>


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