燃焼させない新世代タバコの健康リスク――開発チームに迫る

 肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、心筋梗塞……。これらは喫煙で生じるとされている疾患だが、最近ではPloom、iQOSなど燃焼させない「加熱式」と呼ばれるタバコが、主要メーカーから発売され注目が集まっている。  一体どんな仕組みで? 肝心の吸い心地は? 成人喫煙者なら誰もが気になるポイントを、iQOSを発売したフィリップ・モリス・インターナショナルのCSO(最高科学責任者) マニュエル・C・パイチュ氏に直撃した。

マニュエル・C・パイチュ氏

 一番の疑問は、従来の紙巻きタバコや電子タバコとは何が違うのか? そして、どんな仕組みで有害成分を低減できるのか? そこを理解するためには、まず喫煙者が陥りがちな“大きな誤解”を解く必要がある。 「タバコの有害成分というと、真っ先に思い浮かぶのはニコチンでしょう。ところが実際は、ニコチンには依存性があるものの、病気の主な原因ではないことが分かっています。有害なのは、ホルムアルデヒド、ベンツピレン、一酸化炭素などの化学物質です。そして、これらの成分の多くは、タバコの葉が燃焼する時に発生します。つまり、有害成分を低減するには、温度管理をして、タバコの葉が燃焼しないようにすれば良いのではと考えました」(パイチュ氏)  燃焼させるのではなく、加熱して蒸気を吸う仕組みになっているのだ。電子タバコとは異なり、本物のタバコの葉を使っているので、ニコチンは含まれている。なおかつ有害成分は低減されており、蒸気の中の有害成分が減ることでヤニ汚れや臭いも抑えられる。当然、ライターは必要なく、使うのは温度管理用のマイクロチップが内蔵された専用ホルダーとタバコの葉が圧縮されたヒートスティックのみ。その開発には長い年月と莫大な費用が投資されたという。 「正式には『喫煙関連疾病を発症するリスクを低減する可能性のある商品』(RRP)という新世代のタバコを開発するために、2008年から約2000億円以上の投資を行って研究を積み重ねてきました。その研究も、ビッグデータを活用した『システム毒性学』という最新の手法を取り入れています。一言で言えば、過去の実験データを蓄積したビッグデータをコンピューター上で検証することで、有害成分と疾病の因果関係を予測・検証する技術です」(同)  体内のニコチン濃度や有害成分の発生状況など、ビッグデータ化されて、精緻に検証されてきた。最先端の科学がもたらしたタバコ革命。その革新性は、パイチュ氏が「将来的にはすべての喫煙者がRRPへと移行することを望んでいる」と語るほど。 「タバコの健康被害を抑制するために禁煙を強制しても、悪質な代替品に流れてしまうなど、思うような結果が出ない可能性があることが知られています。たばこによる健康リスクを抑制するためには、リスクの少ない代替品を普及させること。ただし、リスクが少なくても、喫煙者を満足させるだけのクオリティがなければ、そもそも利用されないので意味がありません。現在研究開発している当社のRRPは、初めてその条件を満たす商品といっていいでしょう」(同)  パイチュ氏の「システム毒性学」の研究については、去る10月5日に京都国際会議場で行われた「科学技術と人類の未来に関する医療フォーラム(STSフォーラム)」にて発表されたばかり。タバコにライターで火をつける所作がなくなるのは少し寂しい気もするが、リスクが少なく灰も出ず、臭いも少ないとなれば、メリットは補って余りある。喫煙環境がシビアになっている今、今後のタバコ市場に大きな影響を与えることになるかもしれない。<取材・文/HBO取材班>
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