安倍首相の筆頭ブレーンと宗教団体「生長の家」政治運動――シリーズ【草の根保守の蠢動 第18回】

 これまで、3回にわたって、伊藤哲夫氏と氏が代表を務める「日本政策研究センター」について追いかけてきた。  ここで、少し、これまでの内容を振り返ってみよう。 1.伊藤哲夫氏が「四人組」と呼ばれる安倍晋三のブレーン集団の中でも、筆頭ブレーンと目されていること 2.伊藤氏が第一次安倍政権誕生前から安倍晋三を支え続けきたこと 3.伊藤氏および伊藤氏が率いる「日本政策研究センター」は「保守革命」とやらを標榜していること 4.伊藤氏が率いる「日本政策研究センター」の講演会で「改憲」と「明治憲法復元」が運動目標であると言明されたこと  以上、4点について、これまで主に、刊行された資料と目撃者談に基づいてその内容をお伝えしてきた。  では、この伊藤哲夫氏はいかなる人物なのか  日本政策研究センターが多数の書籍を出版し、自身の主張を広く喧伝していることは前回触れた。これに加え、伊藤哲夫氏は個人名義でも多数の書籍を出版している。  Amazonで伊藤哲夫の名前を検索してみると、彼の著書の一部が一覧で表示される(同姓同名の建築家と医学博士がいるようでその方々の著作も混じって表示される点にご注意願いたい)。  その検索結果がこちらだ。  検索結果の冒頭から、『明治憲法の真実』、『教育勅語の真実』、『憲法はかくして作られた』と、憲法や戦前の体制に関する著作が並ぶことが見て取れる。  これまでの連載でお伝えしてきた日本政策研究センターの姿勢もまさにこの通りだったわけで、これだけでは驚くに値しない。  筆者がここで注目したのが、検索結果3位に表示されている「憲法はかくして作られた」という一冊。まずは筆者の手元にあるこの本の書影、目次、奥付を見ていただきたい。 ⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=64778  奥付によると、著者は伊藤哲夫で発行は日本政策研究センター。出版は平成19年つまり、2007年の11月。この小冊子の内容は、目次を見てもあきらかなように、昭和憲法制定史の概要を伝えるものだ。明治憲法復元さえも唱える日本政策研究センターであれば、「昭和憲法の制定には不備がある」と主張したいのもわかる。  ここで、もう一冊、筆者の手元にある別の書籍の書影、目次、奥付をご覧いただきたい。こちらはAmazonで見つけたものではなく、本連載の取材過程で手に入れた絶版書籍のうちの一つだ。 ⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=64781  装幀は違うものの、先ほど挙げた2007年版の書籍と全く同じ「憲法はかくして作られた」。サブタイトルに至るまで「これが制憲史の真実だ」と、そのままだ。  目次も、両方の書籍の第1章が「ポツダム宣言の受諾」であり、最終章が「幽界ヨリ我国体ヲ護持セント欲ス」という構成で、全く同じ。  違うのは、奥付の名義のみ。こちらの書籍は、編者が「生長の家本部政治局」で発行が「明るい日本を作るシリーズ刊行会」。出版年月は昭和55年つまり1980年の11月。  おわかりいただけるだろうか?  この2冊の存在が物語ることは、「伊藤哲夫は、1980年に『生長の家本部政治局』が出版した書籍を、そのままの形で、それから27年後の2007年に自分の名義で再出版している」  ということだ。  言い換えれば、「安倍首相の筆頭ブレーンと呼ばれる伊藤哲夫と伊藤哲夫が率いる日本政策研究センターは、「生長の家政治運動」のパンフレットを現代に甦らせ、そのまま出版している」ということだ。  ここで、前回登場した、日本政策研究センター主催「第4回『明日への選択』首都圏セミナー」の講演で飛び出した、質問者の「しかし、我々は、もう何十年と、明治憲法復元のために運動してきたのだ。」という発言を思い出していただきたい。  この発言と、「日本政策研究センターを率いる伊藤哲夫が27年経って、生長の家政治運動のパンフレットを再出版した」という事実を並べると、あの質問者が発した「我々」とはすなわち、「生長の家政治運動」のことであるとは言えないだろうか?  果たして、あの質問者が発した「我々」とは「生長の家政治運動」のことなのか? もしその通りであるとすると、この「生長の家政治運動」は日本会議といかに関係がるのか? もはや一切の政治運動と関わりを持たない教団となった現在の「生長の家」とこれらの運動はどのような関係にあるのか?  次回は、これまでの連載の内容を再度振り返り、「伊藤哲夫と日本政策研究センター」と「椛島有三と日本会議」を結ぶ、点と線についてお伝えする。 <取材・文/菅野完(TwitterID:@noiehoie
日本会議の研究

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