ASEAN経済共同体「AEC」発足を控え、タイの地価が高騰。不動産投資の狙い目はここだ

 2015年12月にASEANが経済共同体(AEC)を発足させる。  タイは政治不安が続くものの、各国からの陸路輸送用ハイウェイが集中するので、AECの中心的存在になる可能性が高い。  すでに、2006年にはベトナムのダナンからラオス南部を経由し、タイ東北部、北部を通りミャンマーのモーラミャインまで1450kmのルートである『東西経済回廊』が開通している他、2008年には中国雲南省の昆明からバンコクまでの約2000kmの『南北経済回廊』も開通している。現在、それ以外のハイウェイは着々と準備が進んでいるところだ。  特に現在注目されているのは、ベトナムのブンタウからホーチミン、カンボジアのプノンペンからタイのバンコクを通り、ミャンマーで建設中のダウェイ港まで続く『南部経済回廊』だ。カンボジア、タイともまだ着工していない部分もあり、全通は2020年以降になる見込みだというが、タイのインラック前首相が在任中の2013年1月には安倍総理との会談でもダウェイ新港が話題になったほどだ。  中でも同ルートのうち、着工されていないタイ・ミャンマー国境を持つカンチャナブリ県内の土地はタイや外国の投資家たちからランドバンキングの対象とされ、地価が高騰している。カンチャナブリは映画「戦場にかける橋」の舞台として有名な観光地だ。  日本人投資家もすでにここのランドバンキングに参入しているが、その火付け役になったのがバンコク在住の佐々木扶美さんだ。元々はタイ人の夫と共に老後に暮らす場所の候補としてカンチャナブリの土地を探していた。 「夫の友人にカンチャナブリの方が多く、いい場所だと聞いて探していました。ただ、友人らに聞いた値段は1ライ(タイの土地面積の単位で、1ライはおよそ1600m2)当たり数万バーツ程度だったのに、誰に聞いても10万バーツはしていました」  これがおよそ7年前の話。当時、佐々木さんは、ある村長からカンチャナブリがAECに向けた『南部回廊』の候補になっていることを聞き、土地が値上がっている理由を知った。このことを在住日本人たちに雑談で話したところ興味を持つ人が増え、3年前からタイ人配偶者がいない日本人でも投資ができる仕組みを作ったのである。タイでは外国人名義で土地の所有ができないので、このメリットが評判になった。  佐々木さんは希望投資額などから土地を探して仲介するだけでなく、佐々木さんの会社で土地を押さえ、日本人希望者に分譲もしている。前者はさすがに1000万円前後以上の資金が必要になるが、分譲では200万円以下からでも始められる。  気になる地価だが、例えば【写真1】(⇒https://hbol.jp/?attachment_id=6451)は日本人投資家がひとりで押さえている83.5ライの土地で、現在1ライ当たり約55万バーツ。2~3年前で平均20万バーツ程度、昨年で30~50万バーツで取引されたので、ここ2年程度で2.5倍にもなっている。
イモ

【写真1】83.5ライの土地は次の売却までの間、近隣の農家に貸し出されイモの栽培を行っている

【写真2】(⇒https://hbol.jp/?attachment_id=6452)の土地は背面に山が迫り、正面にクウェー河が流れる。ここは115ライほどで、日本人が4名でそれぞれ土地を押さえている。ここも1ライ当たりが50万バーツほど。ついこの間まで35万バーツだった。カンチャナブリ市街地から20kmほど離れていても環境は抜群で、値下がりの要素がほとんど見当たらない。
舗装されていない道

【写真2】舗装されていない道(写真内、右側)の先にクウェー河が流れる

 軍政下になり情勢に不安の残るタイだが、AEC発足はタイの都合に関係なく進められる。そういう意味ではこのカンチャナブリの地価はしばらく上がり続けるだろうというのが多くの投資家の見解だ。 「カンチャナブリの土地を探すのはまるでダイヤの原石を探すようなもの。このエリアの投資には夢があります」  タイ国内にはランドバンキングの対象となりそうなエリアがいくつかあるが、ここカンチャナブリが今一番熱いのである。 <取材・文/高田胤臣 取材協力 SRCS International Co.,Ltd. http://aseanlandbanking.com/
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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