「海上自衛隊カレーフェスタ」で味わった各艦の秘伝レシピ再現カレー
2015.10.14
海上自衛隊には、3年に一度開催される一大イベントがある。それは「観艦式」、多くの艦艇が集結して航行しつつ展示訓練を行う、艦艇の海上パレードだ。その迫力あふれる艦隊の姿は、艦艇マニア垂涎の光景である。
この観艦式は、一般観客を同乗して航海してくれる。乗艦券は応募した希望者に発送されるのだが、もちろん大変な数の応募が集まり、抽選の倍率は高騰する。ちなみに、前回は12倍だったとのこと。そして今まで外れ続けている筆者は、現在開催中の3年ぶりの観艦式にも当選しなかったらしく、『当選されなかった方々にはご連絡をいたしておりません』との告知通り、連絡はなく乗艦券も送付されてこなかった。
また3年待たねばならないのか、と凹んでいたところ、観艦式記念イベントの一環として、海上自衛隊カレーフェスタが開催されるという。晴れの観艦式で護衛艦に乗艦できないなら、せめて海自カレーを食べてこようじゃないか、と10月10日、横須賀は三笠公園に行ってみた。
このカレーフェスタ、『自衛隊の護衛艦等、23種類のカレーが横須賀に集結! 海上自衛隊から認定を受けた「本物の味」を体験してください』という、各艦艇や海自基地などのレシピを再現したカレーが味わえるというイベントだ。いわば「カレー観艦式」である。
会場となる三笠公園に到着したのは、開始1時間前の朝8時頃。正面入口から入ると、右手に記念艦三笠が鎮座し、左手に東郷元帥像が立つ公園の奥に進むと……既に長蛇の列。これまで横須賀で行われた海自関係のカレーイベントでも、艦艇の魅力に加えカレーの人気を併せた集客力には特筆すべきものがあったが、今回もその人気は健在であった。
さて、今回のイベントでは、全23種のカレーから4種類を選んで食べられるのだが、どれを選ぶか? 自衛隊艦艇のカレーレシピは、時間をかけて工夫を積み重ねられたものだろう、ならば、艦齢が古い艦のカレーほどうまいのではないか、そんな仮説を立てて、今回カレーを出展する艦艇を就役年度順に並べ、古い方から4種類をセレクトすることにした(陸上部隊のカレーは除いた)。
各艦の就役年は…
海洋観測艦 わかさ:1986
護衛艦 ゆうぎり:1989
輸送艇 輸送艇2号:1992
掃海艦 つしま:1993
掃海艦 やえやま:1993
掃海艇 はちじょう:1994
護衛艦 きりしま:1995
試験艦 あすか:1995
海洋観測艦 にちなん:1999
潜水艦 うずしお:2000
護衛艦 いかづち:2001
潜水艦 なるしお:2003
潜水艦 やえしお:2006
潜水艦 せとしお:2007
砕氷艦 しらせ:2009
海洋観測艦 しょうなん:2010
掃海艇 えのしま:2012
護衛艦 てるづき:2013
掃海艇 ちちじま:2013
観測艦「わかさ」、護衛艦「ゆうぎり」、輸送艇2号、そして4種類目は、掃海艦「つしま」と「やえやま」が同年(この2隻は同型艦でもある)だったが、「つしま」のカレーが「つしまやまねこカレー」と銘打っていて「やまねこカレー」って何? となり、選択は「つしま」に。ネーミングの勝利だ。
選んだ4隻中、第一線の戦闘用艦艇は「ゆうぎり」のみで、他の3隻は支援艦艇というセレクトに。第一線艦艇だけでは海上防衛はできない、支援艦艇を含めたバランスのいい編成でなければ効果的な海上防衛力にはならない、という証である(?)…ということで、選ぶカレーを事前に決定して、当日の会場に臨んだのだ。
さて、行列に並び待つこと45分、トレーとスプーンを受け取ってカレーを…上記の通り決めていったので「ゆうぎり」「輸送艇2号」「わかさ」「つしま」と選んでゲット。
さて、肝心の味はどうか。
【ゆうぎりカレー】
欧風の濃い味でバターの風味が効いている。海自の主力、護衛艦にふさわしいオーソドックスな力強さ。
【輸送艇2号ごくうまカレー】
スパイスが効いた刺激的な味。輸送という力仕事を担うには、大人のスパイシーさが必須か。
【わかさ夏カレー】
ひき肉と野菜という派手ではない具材が調和した風味。観測という重要だが地道な任務にも似た穏やかな味わい。
【つしまやまねこカレー】
漢字の「山猫」から想起される硬派でワイルドな味かと思いきや、ひらがなの「やまねこ」という表記らしい、じゃがいもと小麦粉の風味が香る懐かしい味だった。
古参艦艇4隻のカレーを食べ比べてみて、それぞれの微妙な味の差は、カレーという料理のレンジの広さを改めて感じさせてくれた。
しかし、カレーフェスタの4皿は(当然ながら)試食サイズ、すべて食べたあと、かえってカレー欲に火がついて、物足りなさに襲われてしまった。そのため、会場を後にした帰り道、横須賀中央駅近くの「横須賀海軍カレー本舗」に寄って、またカレーを。
こちらは、旧海軍のレシピを元にしたことを謳った、昔風のシンプルな味。海自各艦艇の細かい工夫が凝らされたカレーの直後だけに、両者の違いが浮き彫りになった。つまり、結論を言えば、海軍から海自に受け継がれた「海軍カレー」は、年月を経て現役各艦で発展を続けている、という事実が浮かび上がったのであった。
<取材・文・写真/伊藤龍太郎>
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