一方、国側は「原子炉等規制法に自治体の権利は含まれない」などとして、函館市の原告適格(訴える資格)を否定する。これに対しても原告側は同日、函館市に原告適格があるとする学者4人の意見を載せた陳述書を提出している。
この中で原告は「改正後原子炉等規制法では『財産の保護』が明確に規定されており、原告が原告適格を有することは明白」と反論。神戸大学の阿部泰隆名誉教授は「明文の規定がなければ救済しないとすれば、それは(中略)包括的な権利救済を求める行訴法に反する。自治体が壊滅しても、司法の保護範囲内ではないとすれば、それは法治国家とは言えず、放置国家であろう」とまで指摘している。
これについて原告側の中野宏典弁護士は「国はさまざまな理屈をこねているが『当たり前に考えれば函館市に原告適格がある』ということを各教授は言ってくれた」と説明する。
大間原発は完成すれば、ウランとプルトニウムを混合したMOX燃料だけを使う世界初の「フルMOX原子炉」となる。フルMOX炉はウラン原子炉と比べて「異常発生時の圧力上昇が大きくなる」などの特徴がある。国は同原発を核燃料サイクルの要と位置づけるが、建設に反対する函館市民の署名は、市の人口の半数を超える14万6000人分に達した。次回口頭弁論は来年1月19日に東京地裁で開かれる。
<取材・文/斉藤円華>