iPad Pro発売により顕著になるiOSの弱点
2010年に初代機が発売されて以来、OSを問わずタブレットのデファクトスタンダードとなったiPad。2012年には高画質化をはたし、7.9インチのコンパクトモデル・iPad miniもリリースされ、ユーザーの拡大に寄与してきた。
そして2015年11月。12.9インチという、スタンダードなモバイルPCを超える画面サイズを持つiPad Proがファミリー入りする。
iPad Proに採用されるCPUはA9Xというアップルオリジナルのもの。アップルは「iPad Air 2に比べて最大1.8倍のCPUパフォーマンス」「過去12か月以内に発売されたノートPCの80%以上よりも高性能なCPUを搭載」と発言している。なおiPad Air 2で採用したA8Xは、MacBookに搭載されるCore M-5Y31と比べてシングルコアスコアで微減、マルチコアスコアで微増といったところ。この結果から一部メディアはCore iシリーズを搭載したノートPCよりも速いのではないか、と報道している。
またiOS9はマルチタスキング機能を実現。iPad Proの広面積なディスプレイであれば、2つのアプリの画面を同時に表示するSplit View、小画面で表示するピクチャ・イン・ピクチャといった機能も快適に使いこなせるはずだ。
ところで従来のiPadはコンシューマー市場で高い評価を得てきた。エンタープライズ市場においても同様。しかしスマートフォンほどの買い換え需要がないタブレットのコンシューマー市場は頭打ちの様相をみせている。
エンタープライズ市場においては、古くからPCを使っていた人間にとってハードウェアキーボードやポインティングデバイスがなく、ファイルやデータのアプリ間共有がしにくいiOSは扱いにくい存在となっていた。
iPadが普及し、ビジネス用のアプリも増加したが、マウス&タッチパッド&キーボードというベーシックなユーザーインターフェースこそ効率よく作業を進められるというシーンも少なくない。いや、ビジネスワークにおいては今なお、これがスタンダードといっていい。
そしてこの2点がクリアされない限り、SurfaceのようなWindowsタブレットには敵わない。
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しかしiPad Pro+ Apple Pencilにより、ポインティングデバイスに関してはある程度クリアできるになる。キーボードもカバータイプのSmart Keyboardが用意される。少なくともスケジュールや在庫のデータベースを確認することが多い営業マンにとってはストレスなく業務に打ち込めるようになるはずだ。
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アプリ間共有に関してもマルチタスキング機能により、やはりある程度まではシームレスな共有が可能となった。少なくともマイクロソフトは、iPad Proの発表に合わせてiOS用Officeのアップデートをプレゼン。同発表会において、最大のざわめきとなった。
すべてのワークフローをiPadシリーズでこなせる時代がくるのはまだ先だろう。少なくとも文書作成においては、キーボードの品質が作業スピードを左右するのだから。しかしアップルもマイクロソフトも、タブレットというデバイスにおいてオフィスワークが行える未来を本気で模索しているのは事実だ。
そして、その先にあるのはタブレットとPC用OSの統合という世界かもしれない。マイクロソフトはWindows8時代にチャレンジして失敗しているが、アップルがその轍を踏むとはやや考えにくい。4K動画の編集などディープな作業はデスクトップやハイエンドノートPCにまかせ、スタンダードなアプリやWEBアプリを実行させるデバイスはタッチパネル前提のOS&デバイスにまとまっていくと考えるのが自然だろう。<文・写真/武者良太>
【武者良太】
スマートフォン、デジカメ、オーディオをはじめ各種ガジェットのレビュー・インタビューを担当しているフリーライター。ギズモード・ジャパン、WIREDなどのWEB媒体を中心に活動している。
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