自然エネルギーを手軽に活用。“材料費タダ”で太陽熱温水器を作ってみた
太陽がもたらす膨大なエネルギーを、手軽に生活に取り込むことはできないか? 高価な太陽光発電システムがなくても、自然の恵みをタダで利用できるのが「ペットボトル温水器」。これが意外と実用的だ。
ネットで「ペットボトル温水器」と検索すると、自作した人のブログ記事などがいくつも見つかる。作り方は簡単。ペットボトルに黒いガムテープを巻いて、発泡スチロールの箱をアルミ箔で内張りする。フタは中央をくりぬいて枠を残し、表と裏からラップフィルムを貼れば完成だ。身の回りにあるものを材料に、文字通りタダ同然で作れる。
こんなチャチな仕組みでお湯ができるのか? 晴れた日の朝9時、2リットルのペットボトル2本で作った温水器に水道水を詰めて、日なたに置いてみる。すると正午にはアツアツのお湯ができているではないか! 元々の水温は20度弱だったが、測ってみると50度前後になっている。素手で不用意にさわるとアチチとなる温度だ。
4リットルのアツアツの湯は食器洗いや、畑仕事で汚れた手足を洗ったりするのなどに使っている。温水器は日当たりにもよるが、夏の日中であれば午前と午後で合計8リットルのお湯を生産してくれることがわかった。ただし午後のお湯は40度くらいのぬるま湯だったが……。
ペットボトル温水器でお湯を作れるのは、当然だが晴れた日に限る。しかも冬は日射量が減る上に水温や気温も低い。ペットボトル2本分では、残念ながら光熱費の節約にはほとんど貢献しない。
しかし身の回りの自然エネルギーを実用的に取り出して利用できる体験は新鮮だ。食器を洗う時でも、ペットボトルの湯はあらかじめ使える量が決まっているので、少ない湯を大事に使う。すると結果として、ガス湯沸かし器を使う時よりもお湯の節約になっている。
ガムテープを巻いて作ったペットボトル温水器はそこはかとなく貧乏臭さが漂うのは否めないが、数万円かけてより本格的な太陽光温水器を自作することも可能だ。
さらに持ち家に住んでいれば、市販の太陽光温水器を屋根に乗せてもいい。もっとも市販の太陽熱温水器や太陽熱利用システムは「エコジョーズ」「エネファーム」などの高効率給湯・エネルギーシステムに比べて費用回収期間が長いため、市場は縮小傾向だ。それでも使用に伴いCO2を排出しない強みはある。
太陽エネルギーは、そのまま熱として使ったほうが効率がよい。太陽光発電パネルのエネルギー効率は十数%で、一度電気に変換して、さらに変圧して蓄電して……とやっていくと、ただでさえ高くはないエネルギー効率がどんどん下がる。一方、熱利用のソーラーシステムのエネルギー変換効率は40%以上とされる。これらの長所は見直されても良いのではないか。
<取材・文・撮影/斉藤円華>
50度近い温水ができた
太陽エネルギーは熱で使うと高効率
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