ZARAを傘下に置くインディテックスがネット販売について秘密主義を通す理由
ZARAを傘下に収めるインディテックス(Inditex)の今年上半期(2月1日から7月31日まで)の経常利益は11億6,600万ユーロ(1,574億円)と発表された。
「エル・エコノミスタ」紙)。
そんな驚異的な成長を見せ、メディアに会社情報を提供することを常としているインディテックスが、唯一秘密主義を通しているものがある。
それはインターネットによる販売だ。
2010年にネット販売を開始し、現在のネット販売は全社売上の凡そ5%であろうと推測されているが、その内実はほとんど明かされていないのだ。
公にされた情報と一部の報道から、同社のネット販売の状況を推察してみよう。
インディテックスのネット販売を指揮しているのは昨年から加わったマリア・ファンフル女史だ。彼女はまだ30歳代で、証券会社での勤務を皮切りに、米国シリコンバレーでもネット会社に勤務し、eコマースのノウハウを覚え、25才の時にコンサート・サッカー・映画などのチケットをネット販売する企業にCEOとして入社し成功したことで、メディアにも登場して著名になった人物だ。
今年3月の『Economiadigital』によると、インディテックスのネット販売は〈26か国で行なれ、世界で3000人がこのホールデイングのネット販売に従事している〉という。ネットへの〈毎日の訪問者数は250万人で、ひと月に3000万人以上の訪問〉があり、〈毎週2度のオファーの更新を行ない、7日間で2度新しいモデルを入手〉できるようにしているという。
また、〈毎週新しいモデルを300アイテム掲載〉し、〈掲載するモデルの写真は色など精密に吟味して、写真で見るのと現物に違いがないように心がける〉と同時に、〈どのページにそれぞれのモデルを掲載するかなど検討される〉という。
そして〈顧客からの意見を常に収集出来るようになっている〉のだ。なぜなら、広告媒体を殆んど使わないインディテックスにとって顧客からの意見は重要だからである。
スペイン紙「ボスポプリ」によれば、投資企業ベカ・ファイナンスのアナ・イサベル・ゴンサレス女史の分析としてZARAがネット販売の情報を差し控える理由として、〈「ライバル企業の追跡を回避するためだ」〉という。
またインディテックス側も〈「ネット販売は併行した販売ではなく、全売上を構成する(ひとつの店舗のような)ものである」〉という姿勢をメディアに示して、その公開を常に避けているのだ。9月16日の今年上半期の営業成績をメディアに発表した記者会見の席でもメリルリンチ社のアナリストからのネット販売の売上についての質問に対し、インディテックスCEOのパブロ・イスラ氏は〈「我が社にとって大事なのは全体の売上である」〉と答え、再度の関連質問に対し、同氏は〈「全てが統合されており、その詳細については差し控えたい」〉と述べて断固ネット販売実績の公表を避けたという。ネット販売の実績を公表しない姿勢は創業者アマンシオ・オルテガ氏の考えから来ているとも言われている。ちなみに、一番のライバルであるH&Mもネット販売についての業績の公開は控えているのが現状だ。
ファスト・ファッションにとって、店舗以上の鍵となるであろうネット販売。各社ともその実態や業績を控えるのは戦略上の問題なのかもしれない。
<文/白石和幸 photo by Daniel Lobo on flickr(CC BY 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
これは、昨年同期に比べ26%の上昇である。また、売上は94億2100万ユーロ(1兆2,718億円)で昨年同期より17%の伸びを見せたという。さらに、この12か月で1万人の雇用を生み、現在のホールディングの従業員は141,192人にものぼり、世界88ヶ国に出店し店舗数は6,777店だという。
1975年にスペインの北西部のガリシア地方で僅か1店舗からスタートした企業の成長ぶりは驚異的だ。(参照:
30代の若手女性社員がネット販売を統括
ネット販売の情報公開を差し控える理由
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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