「食べログ評価」アルゴリズムの謎

 今や美味しい店を探す際、欠かすことのできない飲食店レビューサイト。なかでも、月間の利用者数が7000万人近くにのぼる「食べログ」は、そこで下される評価が、お店の売り上げを左右する存在にまでなっている。
食べログロゴ

食べログ

 かつてテレビや雑誌などを通し、一部の食通によって下されていた評価が、一般人の多様な口コミによってジャッジされるのは、悪いことではない。公平性を考えれば、むしろ民主的で歓迎すべきことであろう。しかし、そのルールやシステムが脆弱であれば、そこにつけ込む人間は当然出てくる。実際、2012年、食べログも悪徳業者による、やらせ投稿(飲食店から金銭を受け取り恣意的に評価を釣り上げようとする行為)が問題になったことは記憶に新しい。  問題発覚後、食べログは評価算出のアルゴリズムを大幅に変更したと発表したが、実際どのように変わったのだろうか? 食べログを運営するカカクコムに足を運び、話を聞いてみた。

アルゴリズムは頻繁に変更されている

食べログ評価の仕組み

ホームページにも、食べログ評価の仕組みは掲載されている

「公平性を保つため、アルゴリズムや具体的な構成要素はお話できません」  取材開始早々こう切り出したのは、サービス企画部長の伊藤嘉英氏だ。 「ウェブサイトにも書いてあることですが、食べログの評価(点数)は、レビュアーごとにお店の点数に与える影響度が異なっていて、その影響度は独自のアルゴリズムで算出しています。また、そのアルゴリズムに含まれる構成要素の数は、膨大です。A4の紙に印刷すると何枚にも及びます。以前、100件以上レビューを書くと影響度が上がると噂されたことがありますが、残念ながら数だけでジャッジしているわけではありません」  ちなみにネット上では、レビュアーにどれくらい影響力があるかの目安として、レビュー内の投稿数のフォントが、影響力最低(色なしフォント) 、影響力低(色付きフォント) 、影響力中(色付き太字フォント)、影響力高(色付き太字フォント、濃い背景色あり)の4段階に分かれていると言われているが、これは正しくないそうだ。あくまで「レビュー件数に応じて、色とフォントを変えている」だけらしい。
投稿数

「細字」→「太字」→「太字+薄い帯」→「太字+濃い帯」の順に投稿数は多い

 また2012年以降、アルゴリズムはより複雑に、構成要素の数は増えていると言うが、それだけではないと伊藤氏は続ける。 「Googleの検索ロジックと同じです。誰かに容易に操作されてしまうような要素は、常に排除しています。頻繁にアルゴリズムもしくはこの構成要素を見直していますね。なので、変更のたびに、お店の評価が上下することがあります」  やらせ投稿問題再発防止策は万全のようだ。しかし、構成要素を頻繁に変えることは悪用の防止にはつながるが、正しい評価が下されなくなる可能性もある。そのあたりは、どうなのだろうか? 「正しい評価に正解はないと考えていますが、よりユーザーに役に立つようなアルゴリズムとなるよう日々、見直しを続けています。様々な情報を収集するなかで、レビュアーさんとは普段からこまめにコンタクトを取って、サイトの使い勝手についてリサーチしているのですが、その時に、食べログに掲載されているお店の評価の妥当性についての情報が得られることもあります。そこで得られた情報をアルゴリズムの検討の材料にする場合もあります。特に我々は、東京にいることが多いので、地方のレビュアーさんには積極的にコンタクトを取るようにしていますね」

美味しいお店選びは評価よりレビュアー選びが重要

「うどんが主食」さん

「うどんが主食」さんなど、食べログで有名なレビュアーは数多くいる

 ここまで話を聞いてみて気になったのは、その評価に差異こそあれ、食べログがレビュアーをとても大事にしているということだ。なぜ、そこまでレビュアーを大切にするのだろうか? 「私たちにとって、お店も大事なお客様ですが、レビュアーやユーザーさんも大事なお客様なんです。質の高いサイトを作るには、有益な口コミを数多く掲載することが重要になります。なので、私たちはレビュアーやユーザーもお店と同じく大切にしています。いずれは、ユーザーごとの嗜好にあったお店をすぐにオススメできるシステムを作りたいと考えているのですが、現状では最もそれに近い形が、自分と同じ嗜好を持ったレビュアーを見つけることなのではないかと思っています。いろんな人が高評価を下しているお店もいいですが、ランキングだけではなく、気になるレビュアーからお店を探してみると、自分にとって本当に美味しいと思えるお店が見つかるかもしれません」  美味しい料理は、必ずしも味だけが理由ではない。その味を共感し合えるからこそ、感じられる美味しさもある。その意味では、単純な評価に頼らず、嗜好を同じくするレビュアーの熱い言葉に耳を傾けるのは、意外に正しい“美味しいお店探しのコツ”なのかもしれない。 <文・写真/HBO編集部>
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