「24時間テレビ」、出演者へのギャラはそんなにまずいことなのか?
「愛は地球を救う」をキャッチフレーズに1978年以来毎年8月下旬に放映されてきた「24時間テレビ・愛は地球を救う』。
http://justgiving.jp/c/10953
今年も8月30日~31日にかけて放送され、平均視聴率は歴代6位となる17.3%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)、お馴染みとなった芸能人が長距離をマラソンで走るコーナーで今年のランナーを務めたTOKIOの城島茂さんがゴールしたタイミングで瞬間最高視聴率41.9%を記録するなど好調な結果となった。
しかし、毎年恒例のこの番組だが、「感動の押し売り」や「障碍者を利用している」などさまざまな批判にもさらされている。
そんな批判の最たるものが「司会や出演のタレントに高額のギャラが支払われている」ことだろう。
日本テレビ側は2000年11月にBPOの質問に対し、「基本的にはボランティで依頼し、拘束時間が長い場合は謝礼を支払う」という回答をしており、その真偽についてはいまだ不明の点が多いが、昨年夏に週刊誌『FLASH』が報じたところによれば、チャリティランナーは1000万円、総合司会は500万円という高額な報酬が支払われているという。
今年も、週刊誌やネットニュースが24時間テレビの高額ギャラなどについて書いていたが、果たしてチャリティ番組での高額ギャラはそこまで問題があるものなのだろうか?
チャリティなどに詳しい一般財団法人ジャスト・ギビング・ジャパンの事務局長、梶川拓也氏はこう語る。
「一般に、寄付集めは、コストを掛けても集まる寄付金が多ければ、結果として社会問題の解決に役立つことになります。そのため、国連では集める寄付金の25%程度をファンドレイジング・コスト(寄付を集めるためのコスト)として認めているのが現実です。FLASH誌の報道によれば、24時間テレビでは直接・間接の貢献はありますが、15億4523万円(2013年度実績)の寄付金を集めています。一方、その際に支払われる出演タレントのギャラが、チャリティランナーに1000万円、総合司会に500万円、合計1500万円掛かっているといいます。また、昨年の番組総制作費は4億2000万円だそうです。ギャラは制作費に入るでしょうから、実質4億2000万円がファンドレイジング・コストだとします。CM収入が22億2750万円で寄付金が15億4523万円ですから37億7000万円近くがファンドとして集まる金額になる。25%ルールを適用すれば、9億4000万円がファンディング・コストとして許容できる範囲になります。なので、日本テレビが28億3000万円以上を寄付しているなら国際的なルールの範囲内と言えます。ただ、チャリティやNPOのミッションは『社会問題を解決すること』であり、単純に25%に収まればいいというものでもありません。そのチャリティによってどれだけ社会問題が解決されたか、すなわち投資対効果が重要なのです。だからもし仮に25%以上の投資があったとしても、社会問題の解決に大きく役立ったのであればそれは問題にはなりません」
なるほど、広く社会問題を認知させ、寄付金を募るためには有名人などを稼働してテレビメディアの力を利用し広く寄付を募るのは理にかなっているし、そこにコストがかかるのも仕方がないことだ。ただ、個人の寄付市場が23兆円(2289ドル)のアメリカや1.5兆円(93億ポンド)のイギリスに比べ、GDPでは世界第三位である日本がたったの6931億円に過ぎないほど、寄付やチャリティの文化がいまだ浸透していない日本では、こうした考え方はなかなか理解されないという。
「理解されない理由のひとつに、日本では『ファンドレイザー』という職業がほとんど馴染みがないのが要因です。ファンドレイザーというのは、一言で言えば資金調達をする人のことを指し、チャリティの世界では寄付金を集める人のことになります。欧米ではこのファンドレイザーが職業として認知されていて、そこにはプロとして寄付を集める対価としてコミッションをもらうファンドレイザーと、ボランティアとして対価なしに寄付を集める人の2種類がいるのです。職業として認知されているため、プロのファンドレイザーが対価を得ることもなんら問題になりません。日本ではこうした概念に馴染みがないことと、寄付を集める人は献身的で奉仕的なボランティアであるべきといった考えが根強い。こうした土壌が、『24時間テレビの出演者にギャラが』という批判が生まれる要因のひとつでしょう」
すなわち、自らがマラソンランナーとして走った城島茂さんもいわば「プロのファンドレイザー」であるし、大きく言えば「24時間テレビ」を企画した日本テレビもまた「プロのファンドレイザー」と言えるのだ。
「ただ、こうした思い込みは批判される側の日本テレビさんもまた同じように拘泥されているのかもしれません。もし、日本テレビさんが最初から”我々はプロとして、仕事として寄付を集めるイベントを行っている。そのためにはこれだけの出演料などを支払い番組を制作している”といった情報を開示していれば、現在あるような批判はなかったでしょう。日本テレビさんもまた、”チャリティは清廉潔白でボランティアであるべき”という考えだったのかもしれません。NPOなどが社会問題を解決するためには、1:ファンドレイジングで寄付を集めること 2:社会問題の現場で活動を行うこと 3:ミッションの達成を社会にPRすること の3つの要素が重要です。こうすることで、次のファンドレイジングに繋がり、社会問題解決のサイクルが回っていくのです。日本のNPOなどは2はとても頑張っているのですが、1と3が決定的に不足しているんです」
出演者へのギャラがおかしいとか、割合の多寡の議論以前に、視聴者側は本来我々が目指すべき社会問題が「24時間テレビ」でどれだけ進展したのかをチェックしたほうがいいし、それと同時にファンドレイザー=日本テレビ側は寄付者に対して投資対効果をきちんとPRすることこそが重要なのである。
いずれにしても、チャリティ文化が浸透していない日本において、「24時間テレビ」は誰にも知られた稀有な存在。今後はファンドレイザーとしての情報開示もきっちり行い、日本へのチャリティ文化浸透を促進してもらいたいものだ。
<取材・文/HBO取材班>
※なお、今回の広島市の豪雨災害の緊急支援プロジェクトとして、ジャストギビングが「ボランティアのファンドレイザー」となり、広島市へ直接送れる義援金を集めている。通常プロとして徴収する10%のファンドレイジング・コストを免除、クレジットカード等決済手数料は彼らが負担している。自治体が義援金をインターネット経由で集めるのは初の事例とのこと。500円から気軽に参加できる。
詳しくは⇒
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