安全を確保できなくなっている【日本の航空事情】
2014.09.02
コストカットで安全が脅かされるのは世界共通の事象のようだ。一方、日本の現状を航空評論家の秀島一生氏は「いびつな総合交通政策のせいで、安全を確保できなくなっている」と飛行機の安全性が脅かされていることを憂う。
「日本国内には現在98の空港があります。しかし、そのすべてがまんべんなく活用されているわけではない。日本の国土の広さや地形を考えると、全都道府県に高速道路、新幹線、空港という基幹交通機関をすべて配する必要はありません。各交通機関のバランスを見ながら、必要なところに空港を置けばいい。なのに、日本の政府は総合的な交通政策を考えないまま、ムダな空港を次々に建設してしまった。たとえば大阪国際空港(伊丹)と神戸空港の収入で赤字をまかなう関西国際空港や、開港当初から赤字経営でオスプレイ配備を迫られている佐賀空港などは、その象徴ともいえる空港です」
その結果、東京国際空港(羽田)の異常な過密化という問題が起きている。
「羽田空港-東京国際空港では2010年10月21日に4本目の滑走路をオープンさせました。2020年の東京オリンピック開催により、訪日外国人旅行者が増えることを見すえて、さらにもう1本、5本目の滑走路増設を国土交通省が検討しています。しかし、民間機の空路は軍事用に比べると非常に狭い。ただでさえ狭い航空路にさらにつめこもうとするわけですから、軍事用の航空路をかいくぐって民間機が多く飛ぶことになり、当然事故の確率は高くなる。過去にも全日空機が自衛隊の訓練機とぶつかって墜落した事故がありました」
さらに、日本では海に面した空港が過剰に多いのも災害時のリスクにつながるという。
「例えば、東日本大震災のとき、仙台空港は津波ですべての飛行機が流されてしまいました。東京国際空港、関西国際空港ともに、巨大な南海トラフ地震が起こったら確実に機能停止するでしょう。降りる空港を失った飛行機の燃料が切れたら、墜落事故すら考えられる。成田国際空港は内陸なので津波からは逃れられますが、都心へのアクセスが悪く、東京国際空港に比べるとまだまだ活用できているとは言えません。地域への利益誘導ありきで場当たり的に空港を配置したツケが回ってきています」
コストカットだけでなく、国の総合交通政策の不備によっても私たちの安全は脅かされているのだ。
<取材・文/河本美和子>
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