ギリシャが14の空港の運営をドイツ企業に売却。これからドイツ支配となるギリシャ
「ABC」によれば、〈この売却額は12億ユーロ(1,620億円)、そして毎年空港の賃貸料として2.300万ユーロ(31億円)が支払われることになっている。更に、運営利益の25%が今後40年間ギリシャの民間航空局に支払われる。そして「フラポート」はこの先4年間に空港の改善として3億3,000万ユーロ(445億円)の投資を約束し、最終的に14億ユーロ(1,890億円)の投資を見込んでいる〉という。
もともと、この14の空港の民営化はチプラス政権と債権団との第3次支援金交渉の結果生まれたものではなく、昨年11月に前政権と「フラポート」の間で大枠の合意が交されていた。それが今年チプラス政権が誕生したことによって棚上げとなっていたのだ。
ただ、今回の第3次支援金の合意が、ドイツに副産物的にギリシャ経済からの利益を得る道を与えたことになる。
ギリシャは昨年2,400万人の観光客の訪問を受けた。それはGDPの18%に匹敵するという。今年はこれまでの政治的そして経済的不安から観光客の訪問は減少しているが、これから徐々に回復が見込まれているという。
今回の空港運営権の売却によって、国有資産の民営化として次に対象になるのがギリシャ最大のピレウス港、そしてティサロニキ港だ。ピレウス港の場合は既に中国の中国遠洋運輸(COSCO)と前政権が交渉をしていた経緯もあり、この売却は加速化されるはずだ。更に対象になるのが鉄道、高速道路、コンテナーターミナル、電力、ガスの分野がある。いずれも今後の情勢は見逃せない。
チプラス首相が政権を握った当初、緊縮策反対そしてドイツに対して第二次世界大戦で受けた被害の賠償金として1,620億ユーロ(21兆8,700億円)を請求した。しかし、半年経過した今、ギリシャ経済はまたドイツに依存する体制になりつつある。そしてシリザ党の分裂を覚悟してでも、チプラス首相はギリシャ経済の回復の為にメルケル首相の忠実な下僕になりつつある。その見返りにドイツは第3次支援で170億ユーロ(2兆2950億円)を拠出することになっている。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなしていた。
ギリシャの置かれている現実よりも理想を優先させたポピュリズム政党「シリザ」が今年1月の総選挙で勝利して政権に就いた時に、新民主主義党の前政権によって合意されていた国営空港や港の民営化プランを中断した。その理由として、チプラス政権は「戦略的に国有財産を売却するというのは犯罪行為だ」として反対した。そして半年が経過した今、チプラス政権は前政権が推進していた国有資産の民営化プランを踏襲するという方針に180度方向転換した。第3次支援金の提供を受けなければ国家はデフォルトするという現実を前に目が覚めたのである。そして債権団トロイカはギリシャの500億ユーロ(6兆7,500億円)の価値評価をした国有資産の民営化を要求した。
その民営化の最初の実施が、8月18日に発表された、ギリシャの14の地方空港の運営権をドイツの空港運営企業「フラポート」に売却すると政府が決定したことである。
スペイン紙
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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