浅草橋駅前名物「ガッツ!おやじ」は、ビジネスマンにも人気のランチを出す店の店主だった

ガッツおやじ01 毎週水曜日の朝、浅草橋の駅近くで、街行くビジネスマンに「ガッツ!」とエールを送る、はっぴに身を包んだ一人の男性がいる。“ガッツおやじ”の名で親しまれ、日テレ『月曜から夜ふかし』でも紹介されたことのあるちょっとした有名人だが、単なる“気のいいおやじさん”ではない。その正体は、浅草橋の居酒屋「たいこ茶屋」を経営する嵯峨完氏だ。昼時ともなると、1100円食べ放題のランチを求め、行列ができる人気店の大将なのだ。

ガッツエールは、偶然の賜物だった

 そもそも嵯峨氏が、浅草橋駅前でエールを送ることを始めたのは20年前。一時は8店もの店を展開したものの、バブルが崩壊し、5億もの借金を抱えることに。絶望の中で、なんとかしようと始めたのが、駅前でのチラシ配りだったという。 「始めた当初は、誰もチラシを受け取ってはくれませんでした。でも、自分を奮い立たせようと、思わず『ガッツ!』と口に出してチラシを渡してしまったことがあったんです。これは、高校のサッカー部時代からの習慣で、いつもは心の中で叫んでいたんですが、その時はなぜか叫んでしまったんです(笑)。でも意外なことに、それでチラシを受け取ってくれたんです。『これは!』と思い『ガッツ!』と言いながらチラシを渡すと、みんな受け取ってくれるわけですよ。1時間半くらいのチラシ配りでしたが、あっという間に1000枚のチラシがさばけたことをよく覚えています」
ガッツおやじ02

12時前から店の前は行列に。ビジネスマンだけでなく、評判を聞いた観光客も数多く訪れる

 それからというもの、来る日も来る日も「ガッツ!」と言い続け、チラシ配りに専念。お店の景気も次第によくなり、今では浅草橋を代表する人気居酒屋に成長した。 「チラシはもらってくれるようになりましたが、やっぱり『邪魔だ』とか『うるさい』とか言われることもありました(笑)。でも今では、4人に1人がガッツをしたらタッチで返してくれます。もちろんお店に来てくれる方もいますし『あれがあるから一日頑張れる』と言ってくださる方もいます。20年間続けて、やっと人様に認めてもらった感じ。“継続は力なり”ですよ」

口コミの時代は、お客さんを満足させることが大事

 ドン底から這い上がるために嵯峨氏が実践した努力は、チラシ配りだけではない。まずは、お店にオリジナリティを持たせようと、様々なアイデアを試してみたという。 「まずは、じゃんけん大会をやりました。特別なことではないかもしれませんけど、みんなが参加できることは、やっぱり盛り上がるし、喜んでもらえますよね。あと、今はやってないですけど、当時はお土産にパンティストッキングを配りました。これが、結構喜ばれましてね(笑)。“履いても被っても楽しいパンティストッキング”ということで、男性にも女性にも好評でしたよ」
ガッツおやじ03

1100円のランチは、マグロをはじめ、新鮮なお刺身が食べ放題!

 イベントももちろんだが「たいこ茶屋」の売りは、新鮮な魚介類を安価で食べられることにある。その仕入れ方法にもオリジナリティを感じる。 「築地には、朝早く行くことはありません。スーパーの特売品狙いと同じで、市場が閉まる間際に行く。そうすると、いい魚を安く買える。うちの店は、品揃え重視ではなく、その日あったいい魚を安い値段で提供するのがコンセプトですから。もちろん、安かろう悪かろうではダメですけど、うちの店にはちゃんとした目利きがいるので、それができるんです」  また、お客がリピーターになってくれるための努力、新規のお客を獲得するための努力も怠らない。 「私は、必ずお客さんの席を回って、一緒に乾杯をするんです。で、その時に名刺をいただいて、お店の情報をメールで送るようにしているんです。これで、お客さんのリピート率を上げるようにしています。ただ、同時に新規のお客さんも獲得していかないといけません。そのための方法として、昔はチラシ配りだったのかもしれませんが、今は違います、口コミの時代ですから。だから、うちのお店に来てくださったお客さんには、誠心誠意サービスして、いい印象を持って帰っていただく。そうすると、いい印象を持ってくださったお客さんは、お店のいい評判をネットで流してくださいますし、別のお客さんを連れてきてくださったりもするんです」  現在、浅草橋の駅前でガッツエールを送るものの、チラシを配っていないのは、こういった理由からのようだ。

今でも駅前でガッツエールを送る理由

「今も駅前でエールを送るのは、大変な時に助けてもらった世間の皆様への恩返しです」と語る嵯峨氏。具体的な苦難の乗り越え方は、人によってさまざまではあるが、共通していえることもあるという。 「人生において、乗り越えられない苦難はないと思うんです。乗り越えれる苦難しか、人生には来ない。だから、どんな時もガッツで乗り切ってほしい。“春の来ない冬はなし”“朝の来ない夜はなし”ですよ(笑)」  毎週水曜日の朝、「たいこ茶屋」の大将・嵯峨氏は今も、浅草橋駅前で、街行くビジネスマンにエールを送っている。<文・写真/HBO編集部> 【たいこ茶屋】 〒103-0002 東京都中央区 日本橋馬喰町2-3-2 セントピアビル B1F 03-3639-8670 ホームページ:http://www.taikochaya.jp
PC_middleRec_left
PC_middleRec_right
関連記事
PC_fotterRec_left
PC_foterRec_right