タイ・チェンマイで老後を過ごすロングステイヤーの誤算

チェンマイはタイでも大きめの街だが、山に囲まれ、緑が多くてのどかである。

 日本外務省が今年6月に発表した2014年10月時点での在留邦人数が6万4285人と、前年から約5000人も増加した。  タイ政府は移住希望者の中でも特に定年を迎えた高齢者のために年金ビザやロングステイビザを用意している。ロングステイビザと年金ビザの違いは、年金ビザは滞在許可が90日間しかなく、3か月毎に延長手続きをしなければならないが、ロングステイは最初から1年の滞在許可が出て、銀行預金などにある程度の資産があることが証明できれば年金がなくても取得できる点だ。  タイ北部の街チェンマイは特にロングステイビザを取得して滞在する、いわゆる“ロングステイヤー”が多い。タイで3か月以上暮らす者を長期滞在者とした日本外務省の統計では、チェンマイ領事館で把握している邦人数が3843人、そのうち1780人が60歳以上の高齢者だ(女性は337人)。チェンマイ在住日本人の46%以上が高齢者ということになる。  チェンマイは山に囲まれていて気候がよく、バンコクよりもやや物価が安い。減りつつある年金を有効に使いながら暮らそうという日本人がこぞってやってくるのもわかる。市街地はそこそこに都会的で、和食店や居酒屋も多数ある。大きな病院もあるのでなにかあったときの不安が少ない。大好きなタイで第2の人生を謳歌するなんて夢のような話だ――と、思っていたのは実際に暮らすまでの話だったというのを、最近よく聞くようになった。  ロングステイヤーの大半は厳しい現実に直面することが多いのだという。慣れない外国生活で些細な出来事が積もってストレスになり、若者でも3か月持たずに日本に帰国する人も決して少なくない。歳を取って自分が完成してしまっているロングステイヤーではタイに順応できなくて苦労する人はもっと多い。

理想と現実の違いで苦しむ高齢ロングステイヤー

バンコクよりは和食も安いが、それでもやはり贅沢品だ

 かつてチェンマイの観光警察ボランティアをしていたという日本人Tさんから、チェンマイに滞在するロングステイヤーの裏側を教えてもらった。彼が目にしたチェンマイでの日本人関係の事案はほとんどがロングステイヤーのもだったという。 「通訳として呼び出されて日本人向けの居酒屋に行ったときのことです。夫婦でロングステイをしていた方なんですけど、お酒が入って口論になり、最終的に殴り合いにまで発展していましたよ」  言葉は通じない、知り合いも多くない。夫婦が四六時中顔を突き合わせ、息抜きもできない。理想と現実の違いに積もったストレスが飲酒で爆発する。  また、思っていたほど優雅な暮らしができないこともあって、苛立ちは募るばかりだ。  旅行では湯水のように遣えたが、少ない年金ではセーブして蓄えを残しておかないと医療費が高額になるタイでは安心できない。  去年くらいまではタイ在住者がタイ・バーツを円換算する際には便宜的に「かける3」にしていた。これが今や「かける4」になった。例えば1500バーツの飲み食いもざっと計算すると4500円だったものが、今では6000円にもなるのだ。最早日本で飲んだ方が安い域に入っている。  ただ、屋台でタイ料理を食べて過ごしていればそれほどにはカネはかからない。しかし、タイ料理は味が濃いし、香草や辛さなどで高齢者には毎日は厳しい。どうしても和食に足が向くのは日本人だから仕方がない。ただし、その分カネがかかってくるのだ。 ※次回「タイ・チェンマイの老後ロングステイヤーをカモにする犯罪も……」 <取材・文・撮影/高田胤臣 Twitter ID: @NatureNENAM
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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