Windows 10を無償配布するマイクロソフトの狙いとは?
先月29日(7/29)に待望のリリースを迎えたWindows10。従来のバージョンとは大きく異なり、Windows7や8.1を搭載し、なおかつ条件を満たしていれば無償でアップグレードできるのが最大の特徴だ。「Windowsのアップグレードは高額になりがち」という概念を振り払ったマイクロソフト、その狙いについて解説していくことにしよう。
従来のWindowsは、バージョンが変わるたびにパッケージもしくはアップデート版のOSを新たに購入して導入する必要があった。学生や教職員向けのアカデミック版を除けば、一番安価なエディションのOEM版ですら約1万円以上、パッケージ版なら2万円前後の支出は避けられなかった。さらに、複数台のパソコンを持っていれば、その台数分だけパッケージが購入する必要があったため、よほどのヘビーユーザーでなければアップグレードをするメリットは少なかった。
実際、2015年の7月におけるOSのシェアを見てみると、約6割近くのユーザーがWindows7を利用しており、Windows8/8.1の利用者は2割にも満たしていないことが分かる。さらにサポートが終了しているにも関わらず、Windows XPを利用しているユーザーがWindows8/8.1ユーザーに近い状況が続いている。これは、高価な費用を掛けてまで新しいバージョンを使うというよりも、「使い慣れたバージョンを使えるまで使い倒す」といった市場とユーザーの心理が働いている結果といえよう。
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【2015年7月のOSシェア】
依然としてWindows8のひとつ前にあたるWindows7が圧倒的なシェアを占めている。OSそのものが高価でありながら使い勝手に疑問が残るWindows8を避けるといったユーザー心理が見てとれる。
最新版へのアップグレードをためらうユーザーが多いWindowsに対し、Mac OSは2013年にリリースされたOS X Mavericks(10.9)より無償提供をスタート。それに伴って旧バージョンのユーザーによるアップグレードが積極的に行なわれ、2015年6月現在でMacユーザーの約55%が最新のOS X Yosemiteに移行しており、OS全体のシェア率も堅調に伸びている。WindowsユーザーのWindows8.1へのアップグレード率が僅か7%という結果に比べるとアップグレード率の高さも群を抜いているといってもよいだろう。
【Macユーザーの大半が最新OSを利用】
バージョンに関係なく無償でアップグレードできるため、大半のユーザーが最新のOS X Yosemiteへ移行している。
【堅調にシェアを伸ばすMac OS】
昨年の同時期と比較するとシェア率を約1%延ばしている。多少の増減はあるものの堅調に伸ばしているといってもよいだろう。
Macの例を見るように、OSを無償化することでユーザーのパソコン本体の購入やアップグレードに対する意欲を刺激することは明らかだ。シェアが増えることによって周辺機器やアプリやマルチメディアなどのコンテンツによる利益が確保できるといったメリットが発生することはもちろんだが、ユーザーに対して積極的にOSのアップデートを促せば、機能やセキュリティ面において安定した性能を提供することができるほか、サポートも一本化することができ、旧バージョンのサポート終了を早められるといったメリットもある。
マイクロソフトには、2001年に登場したWindows XPが一般的に定着し、アップグレードが鈍った結果、サポート終了まで13年もの年月を要した苦い経験がある。そういった点においてもOSを無償配布することで最新版を広め、定着させるといった狙いがあるとみてよいだろう。
Windows10の無償のアップデート期間は、リリース日となる2015年の7月29日から1年間となっており、この期間を経過してしまうと有償によるアップデートを行う必要がある。旧バージョンへ戻すこともできることに加え、一度アップデートを行えばサポートが続く限り利用できるので、期限内にアップデートを行っておくとよいだろう。
実際、アップデート後に旧バージョンに戻すユーザーも、少なからずいるようだ。主な理由は、リリース早々見つかっているさまざまな不具合。このことが、無償化サービスの代償となれば、マイクロソフトの狙いは、当初の思惑通りに進まない可能性もある。<文・写真/古作光徳>
【古作光徳】
パソコン関連誌の編集部を経て、2006年にライターとして独立。主にパソコンやスマホ、家電関連誌などを中心に活動中。近年は車やバイク、将棋など、趣味関連誌の執筆や編集にも携わっている。
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