鳥取県の境港漁港に水揚げされた太平洋クロマグロ(写真/Greenpeace)
「海の黒いダイヤ」とも呼ばれ、本マグロとして流通する太平洋クロマグロ。日本人の食卓になじみ深く、スーパーやデパートで日常的に見かけるが、実はその資源量は残り4%にまで激減し枯渇状態にある。
その証拠に、昨年11月には国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種に指定されている。マグロをここまで減らしてしまった一番の原因は、国をあげて資源管理のための積極的かつ適切な漁獲規制をしてこなかったから。マグロ漁は絶滅危惧種指定がなされるまで事実上の獲り放題であった。
今年から国際管理機関での決定に基づき、30kg未満の未成魚の漁獲制限が始まった。かつての4%まで減ってしまっている産卵親魚量(繁殖が可能な成魚の量)を増やすことを目指しての一歩だ。しかし、30kg以上のものについては未だ獲り放題である。資源回復のためには自然サイクルのなかで次世代を産み増やしてくれる、産卵期の親魚をいかに守るかが肝心だ。
太平洋クロマグロの産卵場は唯一、日本海と南西諸島沖にあり、いずれも日本の排他的経済水域内に位置している。そのため、産卵期の親魚を守り資源回復につなげていけるかは、日本人の腕にかかっているといえる。4月~7月の時期は太平洋クロマグロの産卵期にあたるのだが、日本海ではちょうどこの時期、太平洋クロマグロをねらった巻き網漁が行われる。それによって、産卵のために戻ってきたマグロの群れが、巻き網で一網打尽にされている恐れがある。
水揚げは主に鳥取県の境港で行われており、初夏にお値打ち価格で登場する「日本海」や「境港」と記載のものは、産卵のために戻ってきた親魚群が一網打尽にされた成れの果ての可能性が高い。卵をお腹に抱えたまま獲られたマグロも多く含まれている。
この現状を「資源回復の大きな妨げ」と問題視する
国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、国内大手のスーパーマーケットやデパートなどの小売り10社を対象に、産卵期の太平洋クロマグロの取り扱い状況を調査した。その結果、全ての小売りで取り扱いがあり、資源回復目的で産卵期マグロの取り扱いをやめると宣言した小売りはまだない。グリーンピースは小売りを動かすために消費者の声を集める
キャンペーン「赤ちゃんマグロを守って!-Save My Baby-」を開始した。
いま、日本が自主的に率先して規制をすることが求められている。2016年にはワシントン条約締約国会議、2020年 には東京オリンピックを迎える。太平洋クロマグロを絶滅させた消費大国として後ろ指をさされるのか、持続可能な漁業国として世界のお手本になれるかどうかは、私たちの声に委ねられている。
文/小松原和恵(
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン)
「赤ちゃんマグロを守って!-Save My Baby-」キャンペーン
http://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/ocean/seafood/tuna2015/