何度注意しても、同じミスを繰り返す後輩とのつきあい方

 ミスした瞬間は「申し訳ありませんでした!」と平謝り。でも、改善する様子もなく、すぐ同じエラーをやらかしまくる。さっきの反省は一体何だったのか。ツッコむ気力もなくなるほどコリない。そんな相手とどうつきあっていけばいいのか。 後輩 今回は江戸時代の大阪を舞台に、青物問屋の奮闘を描く時代小説『すかたん』(朝井まかて・講談社文庫)から対策を探ってみたい。本作は主人公・千里が青物問屋「河内屋」の若旦那と衝突しながらも“幻の野菜”作りに励むという物語だ。

「潰した本人にはそれを作り直す責めがある」

 主人公・千里と若旦那・清太郎は事あるごとにぶつかる。仕事でしくじり、落ち込む清太郎にも千里は容赦しない。「潰した本人にはそれを作り直す責めがある」と尻をたたく。  千里の態度は冷たく見える。しかし、厳しさが実力を引き出すこともある。ミス続きの後輩との関係に応用するなら、先回りして世話を焼くのを一切やめる。ミスの尻拭いも後輩自身にさせる手もある。“痛い目”を見るチャンスを奪わないことも先輩の仕事なのだ。

「これだけ苦労したんだから報いも相応に欲しいて深追いすんのは素人や」

 河内屋の若旦那・清太郎曰く「これだけ苦労したんだから報いも相応に欲しいて深追いすんのは素人や」。ダメとなったら、見切りをつけるのも重要だと説く。今回の事例に応用するなら、まずは「教えてやったのに……!」という腹立たしさを手放すあたりか。  冷静にミスが起きた状況を観察すると、思わぬ発見があるかもしれない。例えば、形式的なCC:メールや新人を萎縮させる職場の空気、複雑すぎる命令系統など。中堅以上にはごく当たり前のことが、ミスを誘発している可能性もある。

「どない小さなことでも、取り組んだ物事の質をちょっとでも上げてこそ仕事や」

 本書に登場する「河内屋」の女主人・志乃は「仕事いうもんは片づけるもんとちゃいます」が持論。主人公・千里ら奉公人たちにも「取り組んだ物事の質をちょっとでも上げてこそ仕事」と教える。  この考えは、懲りない後輩とのやりとりにも役立つ。その場で復唱させたり、注意するタイミングを変えてみたり。他人を変えるのは難しいが、自分は変われる。ほんの少しアプローチを変えただけで、劇的に変化することもありうるのが仕事の醍醐味でもあるのだ。 <文/島影真奈美> ―【仕事に効く時代小説】『すかたん』(朝井まかて)- <プロフィール> しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。
すかたん

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