頑張っているのに報われない。揚げ句、陰口まで……どう立ち向かえばいいのか?

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 やる気が空回りする瞬間は突然訪れる。頼りない後輩にハッパをかければ「パワハラ」、見かねて先に動けば「スタンドプレー」となじられる。かといって批判を恐れ、身動きがとれなくなっては本末転倒。ではどうすればいいのか。  今回は江戸・浅草で一膳飯屋を営む家族を描いた時代小説『だいこん』(山本一力・光文社文庫)から打開策を探りたい。本作はずば抜けた飯炊きの技術と商才をもった娘・つばきが店とともに成長していく物語だ。 「どうせ陰口をきかれるのなら、越したりせずに、面と向き合っているほうが楽だろう」  主人公・つばきが女主人を務める一膳飯屋「だいこん」は大繁盛。しかし、店がうまくいくにつれ、近所の態度は冷ややかになる。つばきは引っ越しを考えるが、斡旋業を営む富田屋に「面と向き合っているほうが楽だろう」とアドバイスされる。  陰口を叩くような輩とは誰しも関わりたくないものだ。だが、逃げれば余計に陰口に拍車がかかることもある。しれっと話しかけ、ランチに誘うなどあえて友好的な態度をとることが牽制球になるケースも少なくないのだ。  とはいえ、陰口が腹に据えかねることもある。そんなときはどうすべきか。 「あんなひとでも、あたしよりは年上なんだから」  しつこい陰口やあてこすりも、つばきは黙殺する。「あんな人でも、あたしよりは年上だから」と自分をなだめるのも、大人の度量。無用ないさかいに首をつっこむのは狭量さの現れだと肝に銘じたい。 「おまえの炊くごはんがおいしいだけで、だいこんが繁盛しているわけじゃないのよ」  謙虚で働き者のつばきも、母親・おのぶからすると傲慢に映っていたらしい。あるとき、おのぶは不満を爆発させる。  とかく人は自分の仕事ぶりを過大評価し、他人を過小評価しがち。努力が報われないと嘆く前に、周囲の努力に対する目配りが先決。陰口は気遣い不足を知らせる試薬にもなりうるのだ。 <文/島影真奈美> ―【仕事に効く時代小説】『だいこん』(山本一力)- <プロフィール> しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。
だいこん

直木賞作家が贈る下町人情溢れる細腕繁盛記

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