すがやみつるが語る「マンガにおける著作物の使用許諾」――検証「ハイスコアガール」著作権騒動【3】
2014.08.23
「ハイスコアガール」問題におけるスクウェア・エニックスとSNKプレイモアのやりとりは刑事告発という形になり、その詳細が明らかになるのは法廷においてという可能性が出てきた。もっともその他の会社とのトラブルは聞こえてこない。今回告発されたケースだけが特殊だったのだろうか。
今回の報道を受けて、一部ではそもそも許諾をゲームメーカーから取る必要があったのかという見方もあった。この点について、マンガ「ゲームセンターあらし」を1979~1983年に小学館の児童向け月刊誌「コロコロコミック」で連載した、すがやみつる氏はこう語る。
「『ハイスコアガール』は、『すがやさんは、このマンガを読まないといけないでしょう』と数人の知人からそそのかされて、とりあえず第1巻だけ買って読みましたが、とてもよくできたマンガで面白く読ませてもらいました。いま私が勤務する京都精華大学の竹宮惠子学長が、2013年度の手塚治虫文化賞で強く押した理由もわかった気になったものです。既存のゲームをプレイする話ですから、主人公たちがゲームで点やテクニックを競うというストーリーを描くなら、今の御時世だと許諾をとらないといけないと思う」(すがや氏)
著作権法の第32条1項では、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とある。「ハイスコアガール」においてゲームキャラの使い方が著作権法の「引用」に当たるならば、使用許諾を取る必要はない。
だが「ハイスコアガール」は娯楽作品であり、ゲームキャラも作品の演出として使われている。「報道、批評などの『引用』の正当な範囲内に、目的が当てはまらないのではないか」とすがや氏は言う。
「『ハイスコアガール』の作者も『引用』だと思って描いてなかったはず。マンガ家というのは忙しいのが前提。私の『あらし』に関するゲームの使用許諾は、こちらの手がかからないようみなさん気を遣ってやってくださいました。だからこそマンガ家は、マンガの執筆に専念できる。今回の件は、何かちょっとした齟齬のようなものが生じたのではないでしょうか」(すがや氏)
「ハイスコアガール」作者の押切蓮介氏も、2011年は同作を連載しながら、講談社「月刊少年シリウス」で「ゆうやみ特攻隊」、太田出版「ぽこぽこ」で「ピコピコ少年TURBO」、双葉社「漫画アクション」で「焔の眼」など、複数の連載を抱えていた。
作家、編集者、著作権を扱う企業の部署――。娯楽作品を世に出すにあたり、それぞれが果たす役割は異なる。当然ながら著作権は守られるべきものだ。それでも作家がいて、精魂込めて作り上げた作品があり、ページをめくるのを心待ちにしている読者がいる。マンガもゲームも、支えているのは読者でありユーザーだ。今回の件で2社のやりとりはいずれ明るみに出るだろう。企業の姿勢は見られている。捜査の行方がどうなるにせよ、「善意の第三者」とも言うべき、作品とファンにとっての幸せな結末を望みたい。
<取材・文/黒木貴啓 >
「ハイスコアガール」は著作物の「引用」ではない
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