市場縮小のなかで“呼吸する壁”エコカラットが2桁成長する理由
2015.07.09
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◆調湿以外にもニオイや有害物質対策で健康志向のユーザーが支持
「5年前までは、調湿という機能を全面に出していた『エコカラット』ですが、機能にプラスしてデザイン性も高めた結果、インテリアとしてのニーズも高まりました。『エコカラット』を施工されるお客様はリビングや玄関、ダイニングが多いので、やはりデザインは重要な要素です。また、5年前に5社が統合しLIXILになったことによるスケールメリットも発揮されています」
「エコカラット」は、もともとINAXが手掛けていたが、2011年にトステムなどと一緒になりLIXILとして発足。売上高約1兆円の業界最大規模の企業になったことで、販売が強化されたのだ。
「『エコカラット』の直近の見積もり件数で見てみると、新築7割、リフォーム3割とまだまだ新築のほうが多いのですが、長期で見ると新築の比率が減少。リフォームの比率が増えています。新築でもリフォームでも『エコカラット』は好まれているのです」
近年では調湿に加え、ニオイや有害物質軽減でも注目が集まっている。
「例えば、高齢化社会になり介護住宅や介護施設が増えるなかで、介護とニオイの問題が叫ばれていますが、『エコカラット』には調湿以外にも気になるニオイの原因となる成分を吸着し、脱臭・軽減する機能もあります。そのため室内でペットを飼われている方にも需要があります。大規模な工事が不要で、壁紙のような手軽さであとからでも施工できるので、ショールームを訪れてデザインを確認したあと、まずはリビングに施工し、効果を確認してみるという健康志向が強いお客様が多いですね」
調湿やニオイ対策以外にも、ホルムアルデヒドなどの有害物質を低減してくれるほか、水や汚れが入り込みにくい商品もラインナップする。とはいえ課題もある。
「18年も続くブランドですが、最近全国の約4万人を対象に行った当社の調査では、『エコカラット』の認知率は20%でしたが、商品の機能まで知っていた方は6%と、まだまだ低いことがわかりました。『エコカラット』という名前は聞いたことがあっても、機能などと一致しない人が多いのが現状です。いっそうの需要喚起のためにも、さらに商品の啓蒙活動を進めなくてはいけません」
新築中心で中古の流通量は全体の1割程度と言われる日本の住宅市場だが、国土交通省が「中古住宅・リフォームトータルプラン」で、「新築中心の住宅市場から、リフォームにより住宅ストックの品質・性能を高め、中古住宅流通により循環利用されるストック型の住宅市場に転換する」と定めているように、今後は国の方針もリフォーム需要を後押ししている。
認知率が低いにもかかわらず2桁成長を続ける「エコカラット」は、リフォームはもちろん介護などの分野でも需要拡大が見込めるだけに、今後さらなる成長が期待できよう。<取材・文/HBO取材班 撮影/我妻慶一>
少子高齢化が進む日本では、住宅の着工件数が減少中。国土交通省の住宅着工統計によれば、2006年度に約128万戸だった新設住宅着工件戸数は、2014年度には約88万戸と大きく減少している。しかも、その数は今後大きく増えることはない。
野村総合研究所の推測では、新設住宅着工戸数は2020年度には約76万戸、2025年度には約64万戸、2030年度には約53万戸となり、バブル崩壊後のピーク1996年度の約163万戸と比較すると、約3分の1にまで落ち込むという。
そんななか注目されているのがリフォーム市場。日本の住居は、1981年以前の旧建築基準法に沿って建てられた建物が多く、それらが今後、リフォームや建替需要の対象になると推定され(グラフ参照)、二世帯住宅、省エネ、耐震などをキーワードに市場が活性化しているのだ。なかでも、過去5年間毎年2桁成長で注目を集めているのが、“呼吸する壁”「エコカラット」だ。
「18年続く『エコカラット』はLIXILの看板ブランドの1つです」とは、同社タイル事業部タイル商品部部長の小堀誠氏。「エコカラット」は、調湿性能で所定の基準を満たした国内初の調湿建材で、吸湿性能は珪藻土壁の5~6倍。室内の湿度が高くなると湿気を吸湿し、反対に湿度が低くなると湿気を放出する機能を持つため、電気を使わずに調湿ができるのが特徴だ。
「壁に施工する『エコカラット』は、床面積の約4分の1で効果が得られ、健康建材と言われたりもしています。外壁、内装、床、壁などの国内タイル市場は、出荷数量が平成2年に9000万㎡もありましたが、年々縮小傾向にあり、市場規模は縮小の一途。そのなかにあって『エコカラット』は2桁成長を遂げ、この5年間で売り上げが倍増しています。今後は100億円、200億円とさらに売り上げを伸ばしたいですね」(小堀氏)
国内タイル市場が縮小している背景には、前述の新設住宅着工件数など建築需要の減少などがある。そんななかで「エコカラット」が2桁成長を遂げているのはなぜか?
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