国民投票で改革案反対となったギリシャ。この先に待ち構えるはさらに茨の道

オリンポスの神々は何を思う…… photo by Onkel Tuca!(CC BY-SA 3.0)

 7月5日のギリシャで行なわれた国民投票はトロイカ(EU、ECB、IMF)が要求していた改革案に反対(61.31%)、賛成(38.69%)という結果になった。  980万人が投票し、投票率は62.5%と発表された。 この投票結果は、ギリシャの多くの国民が「緊縮策の犠牲になるのはもう御免だ」と言って、トロイカが推進する緊縮案に反対したことを表明したことになる。国民投票をプラニングしたチプラス首相の賭けが勝利したといえるだろう。  しかし、この賭けは非常に危険な賭けである。  スペイン電子紙の『Vozpopuli』は<あたかも自分のこめかみにピストルを突き付けて「自殺するぞ」と周囲を脅し、誰がその救助に手を差し伸べてくれるかようすを見ている風にも受け取れる>、<今のところ、それに同情したのはフランスとイタリアだけである>と痛切に批判した。  更に、同紙は、今回のギリシャのこの「反対」によって、ドイツをリーダーとしてオランダ、フィンランド、オーストリアがギリシャをユーロ圏から追い出すことにより強い姿勢を示す方向に向かう可能性があることにも触れている。そして、<オランド大統領が、ギリシャをユーロ圏から追放させないために、メルケル首相を説得せねばならないだろう>と報じている。

ドイツの主導する「緊縮策」に反旗を翻したギリシャ

 ユーロ圏のリーダー国はドイツである。これまでユーロ圏で推進して来た緊縮策はドイツが主導して来たものだ。なにしろ、ユーロ圏ではGDPで第2の強国フランスも巨額の財政赤字を抱えて逆らえない立場にある。しかも、ドイツはユーロ圏の北欧や中央ヨーロッパ諸国を味方につけている。ユーロ圏の北と南で発展速度の違いの差から、ユーロ圏の二極化が必要であると盛んに言われた時もあるほどだ。  しかし、その一方で、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルは、ドイツが押しつける緊縮策では経済の発展はない、むしろ景気刺戟策が必要であると言う経済学者やメディアもあった。  そしてついに、上記4か国の中で、ギリシャがドイツ主導の緊縮策に反対の烽火をあげたのだ。  その最初の現れは、今年1月のチプラス政権の誕生だった。そして5か月にわたるトロイカとの交渉で、いつもの緊縮策を盛り込んだ改革案に、チプラス首相はそれを受け入れることは出来ないとして、誰も予期していなかった国民投票の実施を発表した。その背景には窮状に苦しむギリシャの事情があった。失業率は26%、若者の失業率50%以上、最近5年間のGDPはマイナス25%、企業の生産性も30%下降、平均して毎日59社が廃業し、613人が新たに失業者になっている、という非常に厳しい事情下にあるのが今のギリシャなのだ。  また、ECBのドラギー総裁の決断にも注目が集まっている。緊急流動性支援金(ELA)の許容最高額890億ユーロ(12兆150億円)まで既に到達している。ECBがELAの支援額を増やすのか、現状の保留の状態を保つのか、或いはELAの支援を打ち切ることを決定するのか。この三者択一をせねばならない段階に来ているという。仮に、支援を打ち切ることを決定すれば、ギリシャはユーロ圏に留まりたいと望んでも、必然的に新しい通貨を発行せねばならなくなるという。それは即ち、ユーロ圏からの離脱を余儀なくさせられることを意味する。  さらに難題はまだある。今月20日に控えているECBへの35億ユーロ(4,725億円)の債務返済である。トロイカからの支援金がない限り、この返済は出来ない。デフォルトになると、ギリシャのユーロ圏からの離脱は決定的なものになる。トロイカから支援金を受けるには、トロイカの改革案を受け入れることが必須条件になっている。しかし、国民投票ではトロイカの改革案に反対票が勝利した。即ち、国民はチプラス首相に改革案というレッドラインを越えてはいけないと促したのである。今後の双方の交渉は非常に厳しいものがある。  最後は今も続く銀行封鎖である。ギリシャ国内では、現在一日に60ユーロが引き出せるだけだという。そして年金者は1週間に120ユーロだ。なにしろ、ギリシャの銀行には現在およそ10億ユーロ(1,350億円)の資金しか残っていないと言われているのだ。  この数字が本当ならば、国民が毎日引き出している金額から推測するに、あと2日程度で引き出せる資金は渇望してしまうと予想されているという……。  注目を集めた国民投票ではチプラスの思惑通り国民はNOと投票した。しかし、この先にギリシャを待ち構えているのは、どの道を選んでも地獄……という窮状なのである。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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