こんなタイプはご用心。「社畜化」しやすい2つのタイプ
― 原田まりるの「エニアグラムで見るニュース」第5回 ―
今年5月、厚生労働省は、「ブラック企業問題」対策として是定勧告を年間三回受けた企業の社名を公表する他に、過重労働により体を壊した人を対象とした、電話相談窓口を設置する方針を固めた。
それにしても、なぜ日本は「ブラック企業」がここまで幅を利かせているのか? そう考えた時に、外せないのが「社畜」という存在である。
社畜とは、ブラック企業に限らずとも、会社に手綱を握られ、奴隷のように働かされている社員を称した呼び名である。そして、被雇用者でありながら、時には雇用主の側に立って「ブラック企業批判」者を批判することさえあるという。
こうした社畜には2種類のパターンがあると言われている。
一つは昭和的な「モーレツサラリーマン」的な社畜で、ネットでは「能動的社畜」などとも呼ばれている。こちらは、多少過酷な労働状況であったとしても、やりがいや責任感を大切にするがゆえに、会社のための必要以上の無駄な努力をしてしまうケースである。
二つ目は「受動的社畜」である。このパターンは、ことを荒立てることが嫌いで、人の言いなりになってしまうので、劣悪な環境であったとしても改善策を考えることも辞めることもなく、だらだらと流れに身を任せてしまう。ことなかれ主義で、消極的な性格の持ち主が陥りやすいケースだ。
エニアグラム的に分析すると「能動的社畜」は、堅実家で責任感が強く、心配性で、集団行動やチームワーク、協調性を大切にするタイプ6「堅実家」、「受動的社畜」は、穏やかで、マイペース、ことなかれ主義で、自己主張をあまりしないタイプ9「調停者」に分類されると言える。
まず「能動的社畜」に陥りやすいと考えられるタイプ6だが、タイプ6はいわゆる典型的な日本人気質である。
堅実で、信頼関係を大切にし、責任感が人一倍強く、上司や権威に対して忠実、人あたりもよくチームワークや協調性を大切にするが、内心ネガティブで心配性なタイプである。
タイプ6は「人から嫌われたくない」という気持ちと「責任感をもって仕事をし、信頼されたい」という気持ちから、過度な忠誠心を持ってしまいがちである。先述したような”被雇用者なのに雇用者側に立って「ブラック企業批判者」を批判する”ような人もこのタイプの忠誠心の発露かもしれない。
「自分は○○したい!」という自発的な意見ではなく、周囲からダメ出しされないかどうかを気にするので、人の顔色を必要以上にうかがってしまう。自分がこのようなタイプだと思う人が「能動的社畜」化しないためには、自分の意見を飲み込んで、人の言いなりになりすぎる面があるということを自覚したほうがよいだろう。
対して「受動的社畜」に陥りやすいタイプ9は、穏やかで人と対立することが嫌いで、ゆったりマイペース、癒し系な存在だ。しかし、一方で周囲の意見や雰囲気に合わせることや、聞き役に回ることを得意とする。
しかし深く物事を考えることや、自分の意見を持つことが苦手であるので「受動的社畜」になりやすいと言える。
自分がこのようなタイプだと思う場合は、現状維持することに囚われすぎず、環境の変化も視野に入れることが大切である。タイプ9は決まったルーティーンや習慣を打破することが苦手なので、「一定の習慣を変えない」という怠惰に陥りやすい。そのため、周囲に流されるまま、仕事量が増えていくのである。
タイプ9が社畜化しないためには、流れに身を委ねるだけでなく、行動的になるよう注意する必要がある。
両タイプとも協調性があり、ひとあたりが良く、穏やかな性格という長所があるが、裏をかえせば他人の様子を伺い、周囲に合わせすぎるといえる。
ブラック企業問題においては、悲しいことに「真面目で断れない人」たちが餌食となってしまう。長所が自分を苦しめることにならないよう自分の主張をしっかりと持つことがブラック企業の被害者にならないための肝となるのではないだろうか。
<文/原田まりる Twitter ID:@HaraDA_MariRU>
85年生まれ。京都市出身。作家・哲学書ナビゲーター。高校時代より哲学書からさまざまな学びを得てきた。著書は、『私の体を鞭打つ言葉』(サンマーク出版)。元レースクイーン。男装ユニット「風男塾」の元メンバー。哲学、漫画、性格類型論(エニアグラム)についての執筆・講演を行う。ホームページ(https://haradamariru.amebaownd.com/)
典型的な日本人気質と言われる「タイプ6」
現状維持を重んじ過ぎ、社畜化する「タイプ9」
ハッシュタグ