「この夏、そうめんの逆襲が始まる」研究家が語る

東急ハンズ新宿店4階にそうめん売場が開設

 そうめん研究家の、ソーメン二郎と申します。主にGWから8月中の時期にそうめん普及のため活動しています。これまでうどん、そば、ラーメン、パスタなどに比べて、なんとなく格下のような扱いを受けてきたそうめんですが、今年は違います。 「この夏、そうめんの逆襲が始まる」。そう断言します。  ここ数年、そうめんの売り場とその種類はどんどん広がっています。東急ハンズ新宿店には各地のそうめんやそうめんつゆを集めた売場もできました。(4階キッチンフロア※7月上旬まで)。永谷園をはじめ大手食品メーカーもそうめんに力を入れ始めています。昨年から日清食品もカップヌードルそうめんを発売、好評を博しています。また私もメディアの取材を受けることが多くなってきています。  そうめんを食べたことがない人はほとんどいないでしょう。嫌いな人も少ないですが、ものすごく好きという人も少ない。でも、実はそうめんのことを「よく知らない」というのが実態ではないかと思っています。私は、奈良県桜井市の三輪そうめんの製麺所の家系に育ち、40年以上そうめんを食べてきました。また、お中元の贈答品として多くの方に感謝の気持ちをそうめんで伝えてきました。

そうめんに1200年の歴史、もともとは高級品

 夏の家庭に日常的に置いてあるそうめんですが、いかに特別な麺であるかというのをまずは知っていただきたいと思います。そうめんは、中国から1200年前に奈良に伝わりました。当時は、「そうめん」ではなく「索餅(さくべい)」と言われていました。  限りなく細く延ばすそうめんづくりには、高度な技術が必要でした。鎌倉、室町時代には宮中や寺社で供えられるような高級品で、庶民の口には入っていませんでした。言ってみれば“セレブ麺”。今は、宮内庁御用達品として天皇陛下にも献上しているそうめんもあります。  江戸の元禄時代になって醤油が生まれ、今のようなつけ麺スタイルになりましたが、それまでは胡椒をまぶしたり梅や味噌をつけて食べていたようです。  江戸時代にようやく庶民に愛されるようになり、七夕にそうめんを食べたり、お中元の贈答品としてお世話になった人に贈ったりするようになりました。  そんな超高級品でありながら、「流しそうめん」という麺界の急流エンタテイメントといえる仕掛けも長年愛され続けています。もはや食べる文化を超越して、コミュニケーションツールとしてもほかの麺の追随を許さないような存在感をアピールしてきました。  それなのに、土曜日の昼ごはんとして母親から出されたそうめんに対して「またそうめんなのぉ??」と子供は不平を申します。夏場に毎日のように出されるそうめんに対して母親にやつ当たりをします。しかし、これはお母さんが悪いわけでは決してありません。  レシピのバリエーションが少ないのが悪いのです。それだけではなく満腹感がないのもいけないのです。つまりいろんなレシピができて、満腹感があればさらにそうめんコミュニケーション(“小麦ケーション”と私は呼んでいます。)は家庭内でまず広がりをみせ、全国的なそうめん普及につながっていくことは間違いありません。

そうめんの名産地は全国に数多くある

 そうめんのうんちくを申し上げますと、1.3mmまでがそうめん、1.3mm~1.7mmがひやむぎ、1.7mm以上がうどんと、農林水産省が定めたJAS規格で決まっています。そうめんもひやむぎもうどんも、原材料(小麦粉、水、塩、油)は同じで太さが違います。そうめんは冬に製造され、梅雨の時期に熟成させて、夏に出荷されます。  ですから、今年の夏に食べるそうめんは昨年の冬に作られたものになります。しかしながらそうめん通の方は、「ひねもの」と言って梅雨を2回越した2年物のそうめんがコシがあって好きだという方もいます。  手延べのそうめんは棒に吊るして乾燥させます。その棒にひっかかっているフック部分を乾燥させたものが「バチ」「フシ」と呼ばれるもので、奈良県桜井市のお土産品として売店で見かけます。奈良県の家庭では、そのバチを味噌汁や豚汁に入れて通年食べています。いわば奈良のソウルフードと言えるでしょう。

三輪そうめんの里、奈良県桜井市

 1200年前に中国から奈良に伝わった小麦文化がそうめんになり、ヨーロッパではパスタになりました。奈良では三輪そうめんと呼ばれるようになり、三輪山の周辺には製麺所が密集しています。その三輪そうめんは、江戸時代の伊勢参りの道中で「美味しい」という噂が庶民の間で広まったと言われています。そして奈良だけでなく西日本を中心に、雨量が多すぎず、湿度も高すぎないそうめんに適した気候の地域でそうめん作りが定着して広がったと思われます。 「日本三大そうめん」とされる三輪そうめん(奈良県桜井市)、揖保の糸(兵庫県揖保郡)、小豆島そうめん(香川県小豆島)をはじめ、半田そうめん(徳島県半田地区)、島原そうめん(長崎県島原市)、神埼そうめん(佐賀県神埼市)、五色そうめん(愛媛県松山市)、白石温麺(宮城県仙台市)、大門そうめん(富山県砺波市)、稲庭そうめん(秋田県湯沢市稲庭町)……と、全国的にそうめんの産地は数多くあります。  7月7日には、江東区青海の東京カルチャーカルチャーで「納涼!七夕そうめん祭」というイベントも行われます。全国のご当地そうめんの食べ比べにはじまり、そうめんのちょい足しにぴったりの缶つまシリーズ(30種類)試食、地酒(CAN酒日本酒6種類)の飲み比べ、ご当地そうめんつゆ(しいたけ、あご、とりだし)、薬味バリエーションの味比べ等々で、新しいそうめん体験を味わってください。  ぜひ、日本人が長年愛されてきたそうめんの奥深さを知っていただけましたら幸いです。 【ソーメン二郎】 そうめん研究家。奈良県桜井市生まれ。素麵製麺所の家系に生まれる。本家は、亀屋・植田製麺所。各地のそうめんの紹介をはじめ、新しいそうめんの食べ方やレシピの考案、そうめんイベントや売り場のプロデュース、セミナーなどの活動も行う。ソーメン二郎の「ソーメン道ブログ」でそうめん情報を日々発信する。http://somendo.blogspot.jp/ 【納涼!七夕そうめん祭~缶つま&ご当地そうめん味比べ!~】 7月7日(火)19:30~21:30 東京カルチャーカルチャーにて開催。食事お酒付前売り券3000円(そうめん各種、日本酒地酒各種、缶つま各種、缶つまと三輪素麺お土産付)・当日券500円増し http://tcc.nifty.com/cs/catalog/tcc_schedule/catalog_150604204925_1.htm
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