ネスレが“レギュラーソリュブル”をめぐって業界団体から脱退
黒木貴啓 >
7月末、ネスレ日本は全日本コーヒー公正取引協議会から脱退を決めた。同協議会が「レギュラーソリュブルコーヒー」という名称を不当表示だと決定したためだ。
「決定的だったのは『レギュラーソリュブルコーヒー』という名称の使用禁止を、パッケージだけでなくCMなど広告コミュニケーションにまで適用されたこと。今後のコーヒー業界に対する考え方に違いがあるとして、脱退を決めました」(ネスレ広報)
ネスレは2010年に、微粉砕したコーヒー豆を抽出液に混ぜて乾燥させた「ネスカフェ 香味焙煎」を発売。「インスタントの手軽さとレギュラーの高い香りをあわせもつ」もののどちらの定義にも当てはまらないと、2013年9月からは「ネスカフェ」シリーズすべてに同製法を導入し、「レギュラーソリュブルコーヒー」表記で販売してきた。
協議会も4年前から「ソリュブル」の分類に関して議論を続けてきた。6月7日の総会で競争規約の改訂が多数決により決定。レギュラーとインスタントが混合された製品は、重量の多い方へ振りわけられることになり、ネスレの「ソリュブル」は「インスタントコーヒー(レギュラーコーヒー入り)」と表記するよう指示された。
「具体的な比率は社外秘だが、確かにインスタントのほうが多い。ただ、レギュラーなら酸化が進んで挽き豆の味や香りが落ちるところを、インスタントで封じ込めている。飲み終えたカップに細かい粒(挽き豆)が残るのも、インスタントの定義と違う。レギュラーでもインスタントでもない新しいコーヒーだと認識している」(ネスレ広報)
一方、協議会は比率に対して難色を示す。
「ネスレが公表してないため比率はわからないが、外から見る限り明らかだったため、インスタントが多いと判断した。海外でインスタントにレギュラーを加えた製品を販売する場合は比率が記載されている」(協議会担当者)
それにしても広告での「ソリュブル」使用禁止は、業界団体を脱退するほど大事だったのか。コミュニケーション手法で工夫するという選択肢はなかったのか。さらに全日本コーヒー協会、日本インスタントコーヒー協会、日本珈琲輸入協会という関連4団体すべてから脱退した理由は?
「新しいイノベーションで生まれた製品をお客様に正しくわかりやすく伝える上で『レギュラーソリュブルコーヒー』という表現は最適であり、これを貫きたいというのが今回の決断でした。4団体からの脱退を決めたのは、どの団体の顔ぶれも基本的に同じだからです」(ネスレ広報)
ネスレの「ソリュブル」表記への思い入れは強い。表記の正当性は、消費者庁など国側がどう判断するかにかかってくるようだ。
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