今秋のバージョンアップでApple Watchはどう変わる?

2015年4月にApple Watchが発売され、ウオッチ(腕時計)型のウェアラブルデバイスに急激に注目が集まっている。2018年にはその市場規模は、現在の6.5倍に当たる1兆2000億円に急拡大するとの予測もある。今月、行われたAppleの技術者向けイベントWWDC2015では、今秋バージョンアップされるApple Watchの新OSも発表された。にわかに盛り上がりを見せる、ウェアラブルデバイスとは何ができる、どんなものなのか。最新事情をおさえておきたい。

ウェアラブルデバイス市場を牽引するApple Watchのおさらい

ウェアラブル まず、話題のApple Watchは我々の生活をどう変えていくのか。NPO法人ウェアラブルコンピュータ研究開発機構理事長、神戸大工学部電気電子工学科の塚本昌彦教授に伺った。 「ウェアラブル端末は体に密着させて使うもの。身体の数値や動きを測定・記録することができるので、健康管理にも役立ちます。Apple Watchには、一定時間座りっぱなしでいると、『立ち上がって1分間ほど動きましょう』と促す機能があります」(塚本教授)  その他、Apple Watchには、消費カロリーや歩数、移動距離、運動を記録する機能など、活動量計としての機能も備えている。毎日の活動量を自動的に記録する「アクティビティ」アプリを使えば、客観的な数値をベースに自分の生活を見直すことも可能だ。  アプリの仕様も“ウェアラブル”ならでは。標準で搭載されたアプリはマップ、カレンダー、天気、メッセージ、ミュージックなど。10種類以上のiPhoneの純正アプリと連携している。例えば、マップは目的地までのナビゲーション、カレンダーは予定のリマインダー、カメラは遠隔でのシャッター操作など、腕時計型のデバイスに適した機能が絞り込まれている。Bluetooth対応ヘッドホンとペアリングさせれば、外で音楽を聞くことも可能だ。  サードパーティのアプリも充実してきている。「Yahoo!路線情報」のApple Watch版は自分で設定した最寄り駅での出発時刻が、Apple Watchでカウントダウン表示される。「雨降りアラート: お天気ナビゲータ」は雨雲の接近を知らせてくれる。突然の豪雨でもアプリからの通知で、雨に濡れないよう対処できる。  他にも、タクシー配車アプリ「Uber」に、翻訳アプリの「エキサイト英語翻訳」などおなじみのアプリもリリースされているし、旅行用予約アプリ「エクスペディア」では旅程も表示できる。現時点ですでに3000を超えるApple Watch対応アプリがあるという。これはベンリ……だが、あれこれインストールしてアクティブに使っていると、すぐに電池が切れてしまいそうでもある。  気になるApple Watchのバッテリーの持ち時間は、約18時間(※)。時計のみの使用で最大48時間、オーディオの連続再生で6.5時間と使い方によって、電力の消耗に幅があるが、「時計」としても使う以上、電源の強化は望まれるところだ。 ※時刻のチェックとアプリなどからの通知を1時間に5回ずつ。アプリを45分間使用し、Bluetooth経由で音楽を再生しながらワークアウトを30分間行った場合。 「現行のApple Watchはベルトをはずしたところにある隠し端子から充電ができる仕様になっていて、すでにサードパーティからもベルトタイプの充電器は製品化済み。Apple純正のベルトもいずれは出るだろうと予想されています」(塚本教授)  バッテリー問題の解決は、いずれ期待できそうだ。

今秋のバージョンアップで可能になることは?

 今秋のOSバージョンアップで、Apple Watchはどう変わるのか。  WWDC2015では、ゴルフのスイングを記録できるアプリもデモンストレーションされた。過去にも手袋にセンサーをつけることで、ゴルフのスイングを測定できる製品はすでにあったが、Apple Watchでも同じことができるようになる。テニスや野球のバッティングなど、さまざまなスポーツへの応用もできそうだ。  また、iPhone OSのバージョンアップに伴う、機能の拡張もある。例えば、「マップ」アプリは、目的地までの道案内に、バスや電車の乗り換え案内もプラスされトータルのナビゲーションが可能になる。世界300の都市がサポートされるので、日本への対応も期待される。  さらには音声アシスタントSiriの能力も向上する。Apple Watchに「30分のランニングをスタート」と話かけるだけで、「ワークアウト」アプリが立ち上がり計測スタート。あれこれあったボタンの操作が不要になる。さらに、家電製品もApple WatchのSiriからの命令で、照明の点灯、エアコンの調整、ドアの施錠が単体でコントロールできるようになる。近未来の生活を予感させる機能だ。すでに発売されている製品もあり、今後さらなる新製品の発表が期待されている。  塚本教授は2015年下期の展開をこう予測する。 「2014年度、全世界でのウェアラブルデバイスの出荷台数は、約2640万台。そのうち、1200万台がリストバンド型端末と市場をリードしてきましたが、今年は、Apple Watchの影響で、ウオッチ型デバイスの販売台数が2~3000万台になるとも言われています。今後市場を牽引するのは、間違いなくApple Watchをはじめウオッチ型デバイスですね」(塚本教授)  ユーザーはApple Watchのどこに価値を見出すのか。その価格の幅は、4万円程度から100万円超までと、広すぎるようにも感じられる。だが、Apple Watchを定義づけているのは、Appleならではの先進性にファッション性、高いカスタマイズの自由度――。実際、飛びついたユーザーに話を聞くと「もう使ってない」という人から、「超楽しい。これなしでは暮らせない」という人まで、Apple Watchとの付き合い方はさまざま。ユーザーが感じる価値の幅は、その価格差よりもはるかに大きい。 <取材・文/橋村望>
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