うっとうしい上司の説教はいかに聞くべきか

【石原壮一郎の名言に訊け】~松岡修造の巻 Q:説教好きの40代の課長が、とにかくうっとうしい。口を開けば「いいか、仕事というのは」とか「人と人との関係っていうのは」とか「社会人たるもの」とか、こうあるべきだのこうすべきだの、ごもっともでご立派なお説教を繰り返し聞かせてくる。そのくせ、そいつは典型的な口だけ野郎で、仕事も人間関係もぜんぜんちゃんとできていない。いつか「言ってることとやってることが大違いですね」と言ってやろうかと思っている。こういう上司と適度に距離を置くにはどうすればいい?(愛知県・25歳・営業) 上司A:ひと事だからかもしれませんが、ちょっと微笑ましいですね。立派なことは言うけど自分がやっていることはダメダメな40代。今日の喫茶「いしはら」は、なぜか冷房の効きがイマイチだと思ったら、近所のテニススクールの熱血コーチでキャラもやたら熱い杉岡さんが、カウンターにいらしゃいました。杉岡さん、どう思いますか?  なに言ってんだよ! ぶつかっていけよ! いつか言ってやろうじゃなくて、そう思ってるのなら、すぐに言えばいいじゃないか! 試合は始まってるんだ。キミがサーブを打って、上司がレシーブを返す。フォルトだっていいんだよ。ひとりで悶々とストレスをため込んでいるなんて、それはうっとうしい態度じゃないのか?  課長は、自分ではできていないかもしれないけど「ごもっともでご立派」なことを言ってくれる。ありがたいじゃないか。課長がどういう人物だろうと、キミには関係ない。大事なのは、その言葉をキミがどう受け止めるかだ。俺が心から尊敬している元プロテニスプレイヤーの松岡修造さんも、テレビやカレンダーでたくさんの名言を発信してくれている。そんな松岡さんが、ある時、こう言ったんだ。 「僕が偉そうに話してることはすべて、これまで僕ができなかったこと」  どうだ、すごい言葉だろ! 自分ができなかったらこそ、心から「それじゃいけない」と思えて、熱いメッセージが湧き出てくる。何でもできる人は、どうしても伝えたいという熱い言葉を持っていないし、もっともらしいことを言ってもこっちに響かないんだ。キミの課長も、自分ができないからこそキミに同じ轍を踏んでほしくなくて、すぐお説教を始めてしまうんじゃないのか。  そうじゃなくて、もしかしたら課長は、ただの嫌な奴かもしれない。部下に偉そうな顔をしたいだけの器の小さな奴かもしれない。いいじゃないか、そうだとしても。相手の人間性がどうであろうと、言葉は謙虚に受け止めて、かみしめたり感謝したりしてみろよ。「人の弱点を見つける天才よりも、人を褒める天才がいい」。これも松岡さんの言葉だ。言行不一致を陰で笑っているヒマがあったら、いいところを探せばいいじゃないか。かわしたりあしらったりする方法じゃなくて、自分にとってタメになる付き合い方を探してみろよ。

【今回の大人メソッド】上司の言葉はたまに役に立ってくれればいい

「心から尊敬できる上司」を求めるのは、ないものねだりだし図々しい了見です。お説教にせよ酒の席での昔話せよ、アラを探せばキリがありません。たとえ「口だけ野郎」だったとしても、それは上司の問題だし上司の人生です。少しでも役に立つ部分があればもうけものだし、言ってくれる気持ちには少しだけ感謝してもバチは当たらないでしょう。 【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。 いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)
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