電力小売の自由化を実施しても、「電気の成分表示」がなければ選ぶのは困難?
来年度からの電力小売り自由化で、一般家庭でも電力会社が選べるようになる。その時、価格はもちろん、「どんな方法で発電した電気か」ということも選ぶ基準になるだろう。
いわば電気の「成分表示」=電源構成について、国の専門家委員会による議論が夏にも再開されるとみられる。環境NGOや自然エネルギーのシンクタンクや消費者団体は軒並み、電力会社が販売する電気の成分表示を義務化するよう国に求めている。
自然エネルギー財団は今年4月に開かれたメディア懇談会で「(電力小売り自由化で)新たな料金メニューや電源メニューの新商品が多数誕生するが、その電源が適切に表示されなければ、消費者が選択する際に混乱」すると指摘。消費者が選択できる条件を整えるために、電力会社が販売する電気について、その電源構成を表示するよう求めている。
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ドイツ・シェーナウ電力会社が消費者(需要家)に説明している電源表示(出典:飯田哲也「自然エネルギーを『選べる』社会へ」、「Energy Democracy」2015年4月15日掲載)
日本生活協同組合連合会(日本生協連)も、国のエネルギーミックス(長期需給見通し)への意見の中で、「『料金体系・サービス・電源構成など』の情報公開を義務付け、消費者がそれらを容易に比較できる条件整備を図ることが必要」と提言。
欧州では2003年6月、電力会社は消費者に対して電源構成と環境影響を表示するよう義務付けられた。ドイツを例にとると、電気代の領収書には電源構成、およびCO2の排出量、放射性廃棄物量が明記されている。消費者は料金に加えて、発電方法によっても電力会社を選ぶことができる。
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東京電力の電気料金等領収書の見本。電源構成などの記載はないが、FITの負担額を示す「再エネ賦課金」の項目はある(東京電力のウェブサイトから引用)
そして日本はというと、電力会社の地域独占が認められている現状では、電気料金の領収書を見ても、例えば天然ガス火力が何%で自然エネルギーが何%、といった”原材料”の情報は書かれていない。またこれは電気の成分表示とは異なるが、FIT(自然エネルギーの固定価格買取制度)による「再エネ賦課金」の負担額は記載されている一方で、例えば「電気料金に含まれる原発のコストはいくらなのか」はわからない。
「東京新聞原発取材班」によると、
一般家庭が電気料金の中から毎月負担する原発費用は200円ほどという。また今年3月に経産省は、電力会社が原発の廃炉費用を電気料金に上乗せして回収できるよう省令を改正している。
日本生協連が昨年6月、男女1000人を対象に行ったアンケート調査では、「電気料金が値上がりしても、自然エネルギーを選びたい」とする人が半数を上回った。しかし自然エネルギーの電気を選びたくても、電気の”成分表示”がなければ難しい。電力小売自由化が消費者にとって意味のあるものとなるよう、今後の制度設計に注目する必要がある。
<取材・文/斉藤円華>