アメリカで急成長する「情弱向け?」格安フィットネスジム

 日本でもプライベートジムRIZAP(ライザップ)を運営する健康コーポレーションが急成長を遂げているが、フィットネス先進国アメリカにも急成長しているフィットネスチェーンがある。
プラネット・フィットネス

photo by Anthony92931 (CC BY-SA 3.0)

 それが「プラネット・フィットネス」だ。  プラネット・フィットネスは、1992年にニューハンプシャー州でスタートした小さなジムだった。それが今や、全米900箇所にフルサイズクラスの支店を持つまでになり(同ジムチェーン公式サイトより)、「もっとも急速に成長したジム」と言われている。  特徴は24時間営業に加えて月会費がたったの10ドルであること(全店舗利用可能な会員は19.99ドル)。プールやスタジオ、サウナはないが、ジムの設備はカーディオマシンがズラッと並ぶほどで広さもフルサイズのジムと変わらない。  しかし、このジムの特徴はそれだけではないのだ……。

究極の「初心者向け」商法!?

 実はこのプラネット・フィットネス、いまアメリカでは半分揶揄される対象になりつつある。  それは、このジムの独特の営業理念にある。  同ジムのコンセプトは、「ジムでビクビクしないで済む!」という完全初心者向けのもの。そのため、過剰なまでにシリアスなトレーニング愛好者を排除するかのようなさまざまなルールがあるのだ。  例えば、「no grunt rule」。ジムでウエイトを持ち上げるとき、ハードにやっている人ほど唸り声を挙げてしあうこともある。これが禁止なのである。曰く「周囲の人を圧倒するから」だという。唸り声禁止なだけならまだいいが、このルールに反するとジム中に鳴り響くような大音量でサイレンがなり、青い回転灯が付くという「LUNK ALARM(バカ警報)」なる「警報装置」まで設置されているという。  基準がかなり厳しく、大きく息を吐いていただけの男性が、警報装置稼働の末退会させられたこともあるという。  この警報装置、有名になりすぎて、YouTubeではわざと鳴らしに行ったマッチョな男たちのおふざけ動画がアップされたり、テレビ番組内でコメディアンが取材に来て「この警報装置のほうが威圧気味では……」と呆れ気味に報じたこともあるほどだ。  また、「ドレスコード」も厳しい。どういうドレスコードかというと、タンクトップやへそ出しの服、バンダナやドゥーラグ(ヒップホップミュージシャンがよく頭に付けている布)やドクロ柄のキャップなどいわゆるハードコアなトレーニング好きが好みそうな自分の体型を誇示する服が禁止なのだ。過去にはこうした服を着ていたフィットネスモデルなどが退会させられたこともあるという。

ジムとしては意味不明なサービスも

ネタ化しているプラネット・フィットネスのピザ(BuzzFeedより)

 もちろん、これだけならばジム初心者にとってはありがたいと思う人もいるだろうし、揶揄の対象になるわけもないだろう。  揶揄されているのは、このジムがある変わったサービスを行っているからだ。  それは「フリーフードサービス」。  ジムと言えば、プロテインなどサプリメントを提供してくれるバーなども設置されている所も多い。しかし、プラネット・フィットネスは一味違う。なんとこのジムは「ピザ」を出してくれるのだ。  すべてのメンバーが享受できるサービスとして、「ピザ・マンデイ」というサービスがある。この日はジム内のカウンターにピザが山積みされて、誰もが食べることができるのだ。ちなみに、火曜日はフリー・ベーグルの日だ。
Tootsie Roll

photo by Windell Oskay on flickr(CC BY 2.0)

 さらに、Tootsie Roll(チョコ味のソフトキャンディ)は毎日常設。マシンの脇にはキャンディの包み紙を捨てるためのカップまで常設されているのである。  最近ではこうしたプラネット・フィットネスの妙なサービスなどを撮影してInstagramやYouTubeなどにアップする人も増えているほどだ。

日本もいずれこの業態が来る!?

 揶揄されるつつも、10ドルという破格の値段で急成長しているのは紛れもない事実。  もともと、フィットネスジムなどは会費だけ払い続けてくれる幽霊会員が多く、真面目なトレーニング愛好者が少ないほうが、収益は安定するし施設の維持もローコストで済むわけで、ある意味理にかなったビジネスモデルと言える。  数十万円するプライベートダイエットジムが大人気の日本。次なるビジネスチャンスは、超低価格かつ超初心者向けジムにあるかもしれない。 参照:BuzzFeed <取材・文/HBO取材班 photo by photo by Anthony92931 (CC BY-SA 3.0) /Windell Oskay on flickr(CC BY 2.0)>
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会