片岡愛之助と熊切あさ美のすれ違い破局劇にみる「誤解されない伝え方」

―原田まりるの「エニアグラムで見るニュース」第1回―
原田まりる

エニアグラムについての講演のほか、哲学ナビゲーターなども行う原田まりるさん

 歌舞伎俳優の片岡愛之助と藤原紀香の熱愛が報じられた。  しかし、報道に対し、片岡愛之助とかねてから交際していた熊切あさ美は「まだ別れていない」と発言し、「もう別れている」とする片岡側との間に意見に食い違いが生まれている。  二人の仲に何があったかは定かではないが、片岡側からすると「仕事に集中するため家をしばらく離れたい」と伝えたことが別れ話であるとの認識であり、熊切側は、2か月間会っていなくても直接別れを告げられたわけではないので、別れていないと認識し、両者で主張が食い違っている。  この騒動に対しネット上では「別れを告げられたと悟るべきだ」と片岡側の主張を正論とする見方と「ハッキリと告げられたわけではないので、熊切が可哀想だ」と熊切の主張が正しいとする側に意見が分かれている。  このような両者とも正論ととれる発言下において、誤解・語弊が生まれるケースは決して珍しくない。  我々の日常生活においても「伝えたつもりが伝わっていなかった」ということは多くあり、トラブルの元となることもある。  では何故このような認識の違いが生まれるのだろうか?  この問題を、ソニーやアップル、トヨタ、コカ・コーラなど世界の企業で導入され、最近では“ビリギャル”内で生徒一人一人への教育指導の指針とし用いられた性格類型論「エニアグラム」をベースとし解明していきたい。

エニアグラム的に考える、食い違いの要因

 エニアグラムというのは、人間の性格を9つのパターンに類型しており、9つのうちのどれか1つを自身の性格の本元として、自己理解や他者との関係の改善に活用しようという考え方だ。タイプは1~9までの数字で分かれており、数字によって優劣などはなく、それぞれに異なった特徴があるという考え方である。タイプによって物の捉え方、価値観などが変わってくるのだが、人間関係における態度も変わってくる。  9つの類型の中でも、大きく分けると「嫌なことがあった場合、相手にハッキリ言うタイプ」/「嫌なことがあった場合、相手に気を遣いながらきちんと伝えるタイプ」/「嫌なことがあった場合、フェードアウトするタイプ」などの3つに分けられるとされている。  もし仮に、双方が相手にきっちりと伝えるタイプであった場合は、今回のような認識のずれは生じることがないのではないかと思われる。しかし、片岡側が「嫌なことがあった場合、フェードアウトするタイプ」であった場合にはどうだろう。ハッキリとは告げず、自然消滅にことを運び、自分の中で自己完結してしまうのではないだろうか。  自分自身は嫌なことがあると、相手に伝えずにフェードアウトするという特性があるので、フェードアウトするということは、相手との関係の拒否であるという常識が出来上がっており、相手もそう考えるのが普通であると思い込んでしまうのだ。  熊切が同じタイプであったのならば、そういった感情を読み取れていたのかもしれないが、タイプが違う場合は別れ話としての決定打に欠け、曖昧な態度としか映らないであろう。 「嫌なことがあった場合、フェードアウトするタイプ」の特徴として挙げられるのは、 ・初対面の人の前だと存在感を消すようにおとなしく、自己主張することがあまりないこと。 ・人と自分の間に壁をつくって話すことが多く、聞き上手であること。 ・空想に耽ることが多く、外にはあまり出さないが、頑固であること。 ・期待をかけられることが苦手であるということ。  などが挙げられる。  熊切の「結婚したい」という期待に、ご贔屓筋の関係もあり、答えられそうになかった片岡はフェードアウトしたとも考えられる。  だとすれば、熊切側は今メディアに露出して主張しまくるのは逆効果かもしれない。なぜならば、「嫌なことがあった場合、フェードアウトするタイプ」は外からまくし立てられるを非常に嫌うので、一度殻に篭ってしまうと説得することが難しく、しばらく放置するほかないのだ。

無理に歩み寄ろうとするのは逆効果になり兼ねない

 このタイプと何か取り決めをする際には、誠心誠意話し合おうと向き合う姿勢を見せ歩み寄ることが逆効果になりかねないので、しばらく放置し、相手が自分のペースを再び取り戻すまで待つことが効果的と言える。もちろん、そのままフェードアウトしてしまう場合もあるだろうが、無理に追えば一生修復不可能な関係にもなりかねない。距離をつめ過ぎないほうが上手くいくのである。  また自身がフェードアウトするタイプであると思う場合は、決着がつく前に引き下がってしまう特徴が自分にはあることを意識し、決定打を打つことから逃げないことが重要となる。  いずれにしても、今回の騒動、自己完結だけでは、破局劇を結末に持っていくことはどうやら難しそうである。 <文/原田まりる Twitter ID:@HaraDA_MariRU> 85年生まれ。京都市出身。作家・哲学書ナビゲーター。高校時代より哲学書からさまざまな学びを得てきた。著書は、『私の体を鞭打つ言葉』(サンマーク出版)。元レースクイーン。男装ユニット「風男塾」の元メンバー。哲学、漫画、性格類型論(エニアグラム)についての執筆・講演を行う。ホームページ(https://haradamariru.amebaownd.com/
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