辺野古の自然破壊の実態、米軍側には伝わっていない!?
沖縄・辺野古で国は、米海兵隊新基地の建設に向けた準備作業を進めている。サンゴの群落が広がり、ジュゴンが生息する辺野古沖の海では、6月末までをめどに海上ボーリング調査が続けられ、巨大なコンクリートブロックも多数沈められた。ところが米国側は、こうした自然破壊の実情をきちんと把握していない可能性がある。
今年4月末、東京・虎ノ門の米国大使館で、大使館側と環境NGOグリーンピース・ジャパンとの意見交換の場が持たれた。テーマは辺野古の環境保全。NGO側は現地の状況を伝えるべく、海中のコンクリートブロックの写真や、ジュゴンが辺野古沖などを行動範囲としていることを示す調査資料を大使館担当者に示した。
「大使館担当者は席を立ち、身を乗り出して資料に見入っていました。辺野古の自然の現状についてほとんど知らない、というような印象でした」
NGO側の出席者の一人で、広報担当の関本幸さんはその時の様子を振り返る。
大使館側は環境・広報の各担当者、および軍事担当者2人の計4人が出席。軍事担当者が会合を仕切ろうとしており、「環境担当者が答えようとすると『ノーコメント』と割って入る場面もありました」(関本さん)。会合はわずか30分で、軍事担当者により突然打ち切られてしまったそうだ。
「現地の状況について、米国側に直接情報提供できたのは大きな成果です」と関本さん。米国大使館と言えば昨年1月、キャロライン・ケネディ駐日大使が和歌山・太地町のイルカ漁を「非人道的だ」とツイートして注目を集めた。同じく海洋ほ乳類のジュゴンが生息する辺野古沖での自然破壊は、米国大使館にとっての「不都合な真実」ということになるのか。
しかしそもそも、国が新基地建設に先立って実施した環境影響評価(アセスメント)自体が問題だ、との指摘もある。
環境NGO「ラムサール・ネットワーク日本」代表理事の花輪伸一さんは今年5月13日、辺野古の環境保全をテーマに都内で開かれた集会で「辺野古の環境アセスは全く科学的ではありません」と批判した。その主な理由はこうだ。
「辺野古の環境アセスで国は、本調査の前に『予備調査』として海中にソナーやビデオカメラなどを設置したりしましたが、これがジュゴンの生息環境を乱すことになってしまいました。つまり、ジュゴンに圧力をかけ、生息場所から追い払っておきながら『ジュゴンはいませんでした』という結論となっており、これが基地建設の前提になっているのです」(花輪さん)
日米間の情報共有が不十分なだけでなく、そもそも情報自体が「基地建設ありき」で歪められているのか。しかし沖縄の基地負担が1%弱しか減らずに恒久化し、しかも自然破壊を隠蔽して行われるとなれば、その責任は重大だ。国は今夏にも辺野古新基地の本体工事に着工することをほのめかしている。 <取材・文/斉藤円華>
米大使館担当者が身を乗り出し、見入った資料とは?
そもそも環境アセス自体がズサン?
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