ギリシア、止まらぬ資産流出と脱税にシリザ政権が考えた奇策

 ギリシャから国外へ資金の流出がとどまらない。
チプラスの苦悩に終わりはない

チプラスの苦悩に終わりはない。 photo by Blömke/Kosinsky/Tschöpe

 5月29日付けの欧州各紙の報道を見ると、その酷さがよくわかる。スペインの経済メディア「エコノミアデジタル」によれば、今年4か月の流出額は281億6,200万ユーロ(3兆8,018億円)にも及ぶという。これはギリシャの2014年度GDPの15%に相当する金額だ。さらに、「エルコンフィデンシャル」によれば、<2010-2012年の3年間に同国富裕者が脱税などの目的で外国に持ち出した資金額は800億ユーロ(10兆8,000億円)と推定されている>というので、4か月の間にこの流出額は尋常ではない。ギリシャ経済が如何に信頼を失っているか一目瞭然である。

合意の条件、消費税増税は観光業への打撃が

 2008年―2013年のGDPは累積30%のマイナス成長、負債はGDPの175%、財政赤字は2009年は30%を越えたが、緊縮策で昨年は5%まで下降させることが出来た。しかし失業率は25%以上を依然維持している。トロイカ(EU委員会、欧州中央銀行、IMF)が指導しての緊縮策は、財政赤字の大幅な削減に効果を見るが、根本的に欠けているのは国家の歳入を増やす、景気刺激策である。国内経済は完全に後退しており、2009-2013年に25万社の中小企業が閉鎖した。この現状で歳入を増やす唯一の手段は観光業のさらなる促進だけである。これによって外貨を稼ぐことである。しかも、ギリシャの経済基盤は観光業と海運業しかない。  しかし、そんな観光業が打撃を受けるであろう要素がトロイカとの合意交渉の中で条件として浮上している。  それが、消費税の増税が見込まれているということだ。これはまだ公になっていないものの、信頼できる情報筋からの情報として、既に欧州メディアでは取り上げられている話だ。  もちろん、これはギリシャ国内で問題視されている。消費税が上がると、ギリシャの唯一の歳入源である観光業が打撃を受けることは必至だからである。  トロイカはギリシャに対して観光業も含め、消費税の増税を今から要望しているという。スペイン紙「エルパイス」は<現在ギリシャではホテルの宿泊費は6.5%の消費税が適用されているが、それが18%になるのだ。飲食業は23%であったのを消費を煽る為に2年前から13%の減税している。それも18%に増税することになる>と報じている。

消費増税させずに、脱税と資産流出を防ぐためのシリザ政権の奇策

 トロイカが消費税の増税から歳入を上げることを強く要望している背景には、ギリシャは脱税が横行している国だという理由がある。  スペイン紙「リブレメルカード」によれば、〈2013年の脱税金額は760億ユーロ(10兆2,600億円)〉と報じた。これは2013年GDP2,420億ユーロ(32兆6,700億円)比で31.4%に相当する額なのである。現在まで、ギリシャがEUから支給されている支援金2,400億ユーロ(32兆4,000億円)と比較しても、脱税規模の大きさに驚かされる。  同紙記事の中で、アテネ大学のハツィス教授は<「ギリシャ人は『税金は国民の富を盗む行為だ』と考えている。法治国家を維持するためには、払わねばならない税金があるということを多くの国民は受け入れることができないのだ」〉と語っている。それ故に、〈「多くのギリシャ人にとって、税金を払わないことへの罪意識は非常に薄い」>のだそうだ。  そんな中、脱税目的で外国に資金が流出しているのを食い止める手段としてシリザ政権が考えているのが「税金恩赦」である。脱税が発覚した場合の罰金は脱税額の46%である。それを恩赦によって15-20%に減額するというものだ。即ち、脱税行為で外国に資金を送ったことを告白するとそれに15-20%を課税するというのだ。しかし、この効果は殆んど期待出来ないというのが常識となっている。  更に、シリザ政権がプランとしてもっているのが、銀行からの高額の引き出しの場合に税金を課すというものだ。即ち、これはアルゼンチンがデフォルトを受けて2002年に適用した預金引き出し制限を行なうことに類似したプランになる。  シリザ政権は消費税増税、脱税恩赦、預金引き出し制限を歳入源としてトロイカと交渉しているという。チプラス首相がユーロ財務会合相との交渉の代表をバルファキス財務相からツァカロトス副外相に交代させた時点で、チプラス首相はユーロ圏に留まることを内心決定したと見られている。  しかし、シリザ政権も目論見通りに行くかというと甚だ疑問である。  というのも、ドイツは既にギリシャが一時的にユーロから離脱させることを念頭に動いているからだけでなく、シリザ党内で政府がトロイカと交渉している内容に反対を唱えるグループの動きが活発になっているからだ。  現在、<シリザの149議席の中で30%は政府のトロイカとの交渉展開に反対している>という。この反対派は党内でも極左派でユーロ圏からの離脱を訴えている。即ち、仮にギリシャ政府とトロイカが合意に至っても、ギリシャの国会で政府案がシリザの反対派と野党の議席とで否決される可能性が生まれて来ているのだ。(インテルナシオナル紙)  ギリシア政権にとって、問題は尽きることない。 <文/白石和幸 photo by Blömke/Kosinsky/Tschöpe (CC BY-SA 3.0 DE)> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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