李克強首相の南米訪問に見る中国の「米大陸戦略」の本気度

白石和幸
 中国のラテンアメリカにおける影響力が日に日に増大している。
1月に北京で行われたCELACの閣僚級会議

1月に北京で行われたCELACの閣僚級会議。photo by Cancillería del Ecuador(CC BY-SA 2.0)

 中国の李克強首相が5月18日から26日までブラジル、コロンビア、ペルー、チリを歴訪した。  中国と繋がりが深く、中国にとっての”ラテンアメリカへの玄関”と呼んでも過言ではない3か国、ブラジル、ベネズエラ、アルゼンチンの中で、ブラジル以外の2か国は、今年1月にベネズエラのマドゥロ大統領、2月にアルゼンチンのフェルナンデス大統領が、それぞれ習主席と北京で会談している。これを見ても、中国の抜け目のないラテンアメリカへの密着振りがわかるだろう。  さらにそれを明確にわからされる事象がある。  それは、今年1月に北京でラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)会議が開催されたことだ。ラテンアメリカ以外の国でこの会議が開催されたのは初めてなのである。これは昨年ブラジルでBRICS会議が開催された際に、中国がそれを提案して、受諾されたものだ。CELAC北京会議で習主席はこの先10年間に中国はラテンアメリカに2,500億ドル(30兆7,500億円)の投資を約束したのだ。

ブラジルにとって渡りの船だった中国の申し出

 李克強首相の今回の最初の訪問先はブラジルだった。『Comunidad Saker Latinoamérica』によれば、中国は、ブラジルで<530億ドル(6兆5,190億円)の投資に繋がる35の合意を結んだ。その中には、ペトロブラス石油公社への70億ドル(8,610億円)の融資、13億ドル(1,599億円)に及ぶエンブラエル社からの22機の旅客機の購入、鉱物資源の開発、道路、鉄道、港、空港などインフラの開発への資金投入などが盛り込まれている>という。  さらに、同メディアは、ブラジルが切望しているのが<大西洋と太平洋を繋ぐ3,500kmの鉄道建設である>だという。ブラジルは大西洋での貿易の発展に限界を見ており、太平洋に出口を求めているのだ。  それに応えるべく、中国が手を貸そうというのだ。太平洋側の受け手はペルー。さらに同メディアは<この大陸横断鉄道の建設に、中国は300億ドル(3兆6,900億円)を投入する予定でいる>と続ける。  ブラジルは2013年頃から経済も低迷を続けており、経済成長率は鈍化し、一方で物価の上昇が続いている。おまけに、国家財政の均衡化の必要から大幅な支出削減も余儀なくさせられている。そして国家を代表するペトロブラスの経営陣と政治家が絡む汚職問題などから、ルセフ大統領への不信も強まっている。そんな中での中国からの支援は助け船を得たようなもの。これ以上ないタイミングだったのだ。 ⇒「訪問した各国で大盤振る舞いを約束した李克強首相」に続く <文/白石和幸 photo by Cancillería del Ecuador on flickr (CC BY-SA 2.0) > しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
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