もはやデフォルト寸前…苦境に立たされるギリシャのチプラス政権

photo by Mariamichelle (CC0 Public Domain)

 5月20日にヨーロッパの主要紙は、ギリシャが6月5日から同月末までに分割による総額15億ユーロ(2,010億円)のIMFへの返済が出来なくなる可能性があると報じた。即ち、デフォルトだ。スペイン紙「エル・ムンド」によれば、<返済が可能となるには、それまでにユーログループ財務相会合との交渉の合意が必要だ>という。この交渉の対象になっている金額は72億ユーロ(9,648億円)だ。<5月分の年金、公務員給与、厚生費など28億ユーロ(3,752億円)の支払は可能>とも報じている。(http://www.elmundo.es/economia/2015/05/20/555c9bc746163f8c388b4584.html)  5月19日のテレビインタビューでバルファキス財務相は「交渉の合意は間近だ」と述べていた。しかし、ジャン=クロード・ユンケルEU委員長は「5月22日にユーロ財務相会合が予定されているが、合意に至るのは難しい」と答えたという(http://www.elconfidencial.com/mundo/2015-05-19/los-griegos-comienzan-a-dar-la-espalda-asyriza_839332/)。そしてその日、案の定、進展のない会合となった。

守るべきは公約か、ユーロの求める条件か?

 交渉の合意に時間がかかっているのは、ギリシャ政府が、ユーログループの求める「年金と公務員給与の減額」に同意出来ないからだ。  これまで困窮した生活を余儀なくさせられてきたギリシャ国民を更に苦しめたくないという理由から、ギリシャ政府はこの減額に反対している。しかも、この二つの項目の減額はしない、というのがシリザの選挙公約でもあったのだ。そのため、今月23日にはスペインのエクスパンシオン紙でも、<「ギリシャ社会において更なる緊縮を迫るような屈辱的な条件は受け入れることは出来ない」>とアレクシス・チプラス首相が表明したことが報じられたほどだ。(http://www.expansion.com/economia/politica/2015/05/23/5560a68022601d48738b4586.html)  エルコンフィデンシャル紙も、同様に<シリザ党内にも、ユーログループとの交渉内容に反対している議員もいて、彼等は更に厳しい生活を迫られることに反対して、ユーロ圏からの離脱を政府に求めている>と報じている。(http://www.elconfidencial.com/mundo/2015-05-19/los-griegos-comienzan-a-dar-la-espalda-asyriza_839332/

国民の支持を失いつつあるチプラス政権

 ただ、こうした状況を受けてギリシャ国民は政府を支持するかというとそうではないようだ。むしろ、政府のユーログループとの交渉が難航しているのが反映されてきている。前出の「エルコンフィデンシャル」紙の記事でも、<2月にシリザ政府への国民の支持率は70-80%あったのが、現在35%まで落ちている。そして48%の国民は政府のユーログループとの交渉での戦略は良くないと答えた>と報じられている。  というのも、<80%の国民は依然ユーロ圏に留まることを希望している>からだ。  現在交渉台に上がっている上述72億ユーロは前政権から受け継いだものであるが、ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相は5月20日のウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、<「ユーロ圏でこれまで遂行して来た緊縮策とギリシャ前政権がこれまで5年間果たして来た改革を、ギリシャ新政権は反古にしようと固執している」>と批判した。そして、<「6月末までに合意に至らない場合は、72億ユーロの支援金も消滅する。よって多額の債務の返済は不能となる。現状の姿勢を持ち続ける政府であれば、仮に新たな支援金を提供するということになっても、相当慎重に検討する必要がある」>と述べて、シリザ政権への失望をあらわにした(http://lat.wsj.com/articles/SB10495436070549514205404580652930053376958?tesla=y)。  ギリシャへの3大債権国は<ドイツ、フランス、イタリアで、それぞれ727億ユーロ(9兆8,140億円)、552億ユーロ(7兆3,960億円)、483億ユーロ(6兆4,720億円)>をこれまでギリシャに融資している  ドイツ政府の経済政策アドバイサーは既にギリシャのユーロ離脱を示唆している。その代表がメルケル首相のアドバイサーであるミュヘン経済研究所(IFO)のウエルネル・シン教授だ。同氏はスペインの『シンコ・ディアス』紙の取材に応えて、<「ギリシャがユーロ圏に留まる限りギリシャ国民にとって耐え難い苦しみが続くことになる。雇用などを生むにはユーロ圏からの離脱が唯一の解決策だ」>と述べている(http://cincodias.com/cincodias/2015/03/09/economia/1425905504_555567.html)。これは一旦ユーロ圏から出て、旧通貨ドラクマに戻り、ギリシャ独自の金融政策を行い、平価の切下げなどで生産性に競争力をつける以外に経済回復の可能性はないということを意味する指摘である。

ギリシャに接近し始めたロシア

 さらに、ロシアもギリシャを誘う挙に出た。BRICS新開発銀行のメンバーとなって参加することをロシアのストルチャック財務副大臣がチプラス首相に今月11日に電話会談で打診したのである。チプラス首相はそれに関心を持っていると回答し、6月18-20日にサンクトペテルスグルクで開催が予定されている経済フォーラムに出席する意向であることを伝えた。  チプラス政権は選挙で勝利した公約を果たさねばならないという使命感を前面に出しているが、国の金庫はほぼ空っぽになっている。ユーロ圏からの支援金の受給が早急に必要だ。しかし、その受給を受けるには選挙公約を反古にせねばならない。それを避ける為にロシアの誘いに乗ってBRICSへの接近をもって、ユーログループの交渉条件が緩和されるのではないかと様子を伺っている。それが駄目なら、BRICSへの加盟も行けるところまで検討して行く。このような状況にあるのが現在のギリシャなのである。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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