惣菜マーケットが飛び抜けて絶好調な理由
今年、日経平均が15年ぶりに2万円台を回復し、20日に発表された2015年1~3月期の実質国内総生産は前期比で0.6%増。前四半期に続き連続でプラス成長になった。国内景気についても、企業収益の改善などでゆるやかな回復基調をたどっているとの認識が多数のようだ。
松浦達也>
まつうら・たつや/東京都生まれ。編集者/ライター。「食」ジャンルでは「食べる」「つくる」「ひもとく」を標榜するフードアクティビストとして、テレビ、ラジオなどで食のトレンドやニュース解説を行うほか、『dancyu』などの料理・グルメ誌から一般誌、ニュースサイトまで幅広く執筆、編集に携わる。著書に『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成も手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破
もっとも各種調査を見ると、個人消費の持ち直しは鈍く、景気回復を実感しているという層はまだまだ少ない。消費税増税後の買い控えムードや、若者・働き盛り世代での節約志向は、現在も続いているように見える。
そうしたムードに先駆けて絶好調のマーケットがある。中食市場だ。各調査で多少の違いはあるが、いずれの調査でも市場規模は右肩上がり。外食産業総合調査研究センター調べでは30年前の1985年に1兆円あまりの規模だった市場が、数倍以上に膨れ上がっている。矢野経済研究所の調査では2012年の惣菜(中食)市場は8兆2278億円となっている。
なかでも市場規模を大きく捉えているのが、日本惣菜協会の調査だ。19日に発行された「2015年版惣菜白書」によると、2010年には8兆1238億円規模だった市場が2012年に8兆5136億円、2014年には前年比2.4%増の9兆1080億円(予測)と、初の9兆円超えが見込まれている。
実績として最新の2013年の内訳を見ると「CVS」つまりコンビニエンスストアの躍進が目立つ。売上が前年比4.8%増、業態別の市場構成比でも0.8%増で全体の29%となった。コンビニ惣菜だけでも市場規模は2兆5000億円。現在市場構成比トップの「専門店、他」も売上高を伸ばしているが、中食市場全体が活況を呈している上、コンビニ惣菜の勢いがあまりに急なため、専門店のシェアは減少傾向にある。この勢いが続けば、2~3年後にはコンビニ惣菜が市場構成比トップに躍り出る可能性が高い。
折しも現在、シェアトップのセブン-イレブンが自社ポイントシステムの「nanaco」で、惣菜・冷凍食品を「5個買うと1個無料」キャンペーンを行っている。ローソンも4月に「春の食卓クーポン」を店頭配布し、惣菜などの対象商品20円引きというセールを展開した。もともと弁当や惣菜といった中食はコンビニエンスストアの生命線とも言えるアイテムだが、各チェーンともさらなる強化施策を推し進めている。
昭和の頃、「惣菜」と言えば専門店や精肉店、弁当屋などで求めるものだった。平成に入った頃からはスーパーやデパ地下の惣菜売り場が存在感を増した。現在、デパ地下などは外国人観光客にとってひそかな人気スポットとなっている(余談だが、アメリカの有名ロックバンド、エアロスミスのメンバーは来日するとデパ地下に立ち寄るのが通例となっている)。
個人消費の持ち直しからインバウンドまで、もはや中食や惣菜は日本の景気動向を占うキーアイテムと言っても言い過ぎではない(と思う)。
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