不慣れな現場を仕切らなくてはいけないとき、どうすればいい?

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 仕事をしていると思いがけない役割を振られることがある。例えば、突然のリーダー抜擢や担当替え。引き継ぎが不十分なまま、現場を仕切らなくてはいけないこともある。そんなとき、どうすればいいのか。  今回は直木賞作家・浅田次郎の時代小説『一路』(中公文庫)からヒントを探りたい。本作は、弱冠19歳で参勤交代の指揮を任された若者の奮闘を描いた物語だ。 ◆「人間、おしまいと思えばいつでもおしまい。まだと思えばいつまでもまだ」  このセリフは、大名行列が泊まる宿の手配を忘れた主人公・一路(いちろ)に対する叱咤激励として登場する。  誰にでも失敗はある。そこで「おしまいだ」と嘆くだけなのか、粘り強くリカバリをはかるかで印象はまるで違う。周囲からすると、助けたくなるのは後者。諦めない姿勢が周囲の心を動かすのだ。 ◆「結果ばかりを闇雲に求めようとはせず、今少し供揃えの皆々様にご配慮なされよ」  本作では総勢50名の大名行列が西美濃田名部郡(現在の岐阜県関ヶ原辺り)から江戸城まで旅をする。関所の役人・角兵衛は先を急ぐ一路を戒める。  不慣れな現場では誰しも、自分の責任を果たすだけで精一杯になりやすい。しかし、メンバーの状態に目を配るのもリーダーの役目。トラブルを未然に防ぐのはもちろん、気遣いがチームの士気を高める。 ◆「御役目を全うせんとするならば、まず無理をしてはならぬ」  このセリフは大吹雪のなか、予定通りに出発しようとする一路に向けたもの。宿場役人の伝八郎は「子の働きぶりが父に及ばぬは当然のこと」と一路を諭す。  前任者より優れた結果を出さなくてはいけない。そんな焦りはあらぬ失敗を呼び込む。まずは自分自身が前任者との比較をやめることが最初の一歩。役割を果たすことにのみ注力すれば、雑音に惑わされることもない。  不慣れな現場を仕切るのは気苦労の連続。でも、よくよく考えれば、最初から慣れている人は皆無のはず。多少の失敗はおそれずに行動すれば、自分も周囲も成長する。頭が動けば尾も動く、のだ。 <文/島影真奈美> ―【仕事に効く時代小説】『火天の城』(山本兼一)― <プロフィール> しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。
一路

いざ江戸見参の道中へ!

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