「女性器アート」で女性差別を笑い飛ばす、ろくでなし子の法廷戦術

 女性器を型取りしたアート作品の制作で2度にわたり逮捕された漫画家・芸術家の「ろくでなし子」さん。わいせつ物陳列などの罪で起訴され、今年4月15日には東京地裁で初公判が開かれた。ろくでなし子さんは「私のアート作品は『わいせつ』ではありませんので無罪です」と主張。徹底的に争う構えだ。

 しかし意見陳述を見ていくと、本人にとって最も受け入れられないのは「わいせつ」認定もさることながら、自らの体の一部である女性器に拒絶反応を示す、日本の女性差別そのものであることが見えてくる。

制作動機「わたしの体を取り戻す」

初公判を終えて会見したろくでなし子さん=4月15日、都内で

 ろくでなし子さんは初公判の意見陳述で、自らが女性器アートに取り組む理由をこう説明した。

「私がなぜ(アート作品で)女性器をモチーフとしたり、女性器の名称である『まんこ』という3文字を発信し続けてきたかと言えば、女性であるわたしにとっては、女性器は自分の大事な体の一部に過ぎないものであるにもかかわらず、ここ日本においては蔑まれ、汚いものや恥ずかしいもの、いやらしいものとして扱われ、とてもおかしいと強く感じたからこそでした」

 性器をめぐるろくでなし子さんの認識には異論や反論もあるだろう。しかし彼女が女性器をことさらにタブー視する日本社会に強い違和感を覚えたのは事実だ。意見陳述でろくでなし子さんはこう続けた。

「私はなぜそんな風になってしまったかを考えました。その結果、女性器はまるで男性の愛玩物のように扱われているのが原因で、根底にあるのは女性差別であると思い至りました」

 実は日本は、世界でも男女格差(ジェンダーギャップ)が激しい国だ。わかりやすい例では、銃撃テロにも屈せず女性への教育を主張してノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの母国・パキスタンでは、国会議員の2割を女性が占める。しかし日本はたったの8%にすぎない。

 日本の女性の収入は男性の7割にとどまり、出産と子育てを機に会社をやめると、再び同じ仕事と収入を得るのは困難だ。最近では、低収入から抜け出せない女性が性産業で働かざるを得ない実態も浮かび上がっている。

 その背景には「男が外で稼ぎ、女が家を守る」という強固な役割固定がある。そこでは男にとって女は「養うもの」だ。「女性器は男の愛玩物か!」というろくでなし子さんの訴えは、日本社会に根深くはびこる男女格差のありようと重なって見える。

バカバカしさに女性の共感広がる

 女性差別(男女格差)を背景とした日本の女性の生きづらさ(=男性の生きづらさ)について、ろくでなし子さんは声高に語ることはしなかった。そのかわりに、タブー視されてきた女性器をモチーフにユーモラスな作品を作ることで、差別とセットになったいやらしさを払拭しようと企てた。

 いわく、女性器をお菓子に模した「スイーツまん」、ジオラマ人形をのせた「ジオラまん」、暗闇で光る女性器の照明器具「シャンデビラ」……。ちなみに「シャンデビラ」は、「女性器は布団の中でひそやかに拝むものだ」と男性から批判されたことへの反発で作ったのだそうだ。

 初公判翌日の4月16日、都内でろくでなし子さんと現代美術家の柴田英里さんとの対談が開かれた(週刊金曜日主催)。柴田さんは一連の女性器アートを「すっごくバカバカしい。『母』か『エロ』かという、女性への二分した評価から、バカバカしさによって完全に脱却している。ギャハハハと笑う世界ですごく面白い」と評価。

 その上で柴田さんは、作品が若い女性に受け入れられている背景をこう分析して見せた。

「表面上は男女平等の建前がある社会で、女性が悲しみや怒りをフェミニズムとして打ち出した時、今の若い女性は『私を不幸扱いしないで』と拒否反応を示すことがある。でも(ろくでなし子さんの作品は)バカバカしい笑いを誘うので、フェミニズムを無意識に避けようとする若い女性にも敷居がすごく低い」

 意見陳述でろくでなし子さんは、自身の作品を支持してくれる若い女性の反響を「彼女たちはわたしの作品を見て、『なぜその名前を言ってはならないのかと改めて考え、自分の体を大切に思うことができるようになった』と口々に言ってくださいました」と、紹介している。

 女性器をお笑いアート作品にしたことで「わいせつ」を理由に2度逮捕され、今後の裁判に臨むろくでなし子さん。逮捕・起訴という国家の「過剰」なリアクションは、日本の女性差別の根深さをかえって裏書きするようで興味深い。

<取材・文・撮影/斉藤円華>


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